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EnterpriseZine Day 2024 Summer レポート

「レガシーしか扱えない企業に未来はない」 “わかってくれない経営層”を変える情シスに必要な5つの要素

元日清食品CIOの喜多羅滋夫氏 × 文部科学省 最高情報セキュリティアドバイザーの齊藤愼仁氏が斬る

 2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」で警鐘が鳴らされた「2025年の崖」。しかし、そこから5年が経過した2023年に情報処理推進機構(IPA)が発表した「DX白書2023」によれば、「レガシーシステムが半分程度以上残っている」と回答した企業は41.2%にも上る。なぜこれほどにも多くの企業でレガシーシステムからの脱却が進まないのだろうか。2024年6月に開催された編集部主催のカンファレンス「EnterpriseZine Day 2024 Summer」では、情報システム部門を中心としたDXの支援をはじめ、日清食品ホールディングスでグループCIOとしてDXをけん引した経験を持つ喜多羅滋夫氏と、クラウドネイティブの代表取締役社長を務める傍ら文部科学省の最高情報セキュリティアドバイザーも兼務する齊藤愼仁氏が徹底議論。モデレーターはノンフィクションライターの筆者が務めた。今回はそのエッセンスをお届けする。

なぜレガシーから抜け出せない? 失敗する企業が陥る落とし穴

 なぜこれほどまでに日本のレガシーシステム脱却は進んでいないのか。喜多羅氏がその理由として真っ先に挙げたのは「企業のIT投資意欲の低さ」だ。経営層がシステム刷新の必要性を理解していないケースはもちろん、情報システム部門自身も「そのうち何とかなる」と問題を先送りしている傾向が見られるという。齊藤氏も同様に問題意識の欠如を指摘。現状のシステムで業務が回っている限り、刷新する必要性を感じない企業が多いのだ。

 このような場合、情報システム部門が経営層に対して適切にアラートを上げられていない可能性もある。喜多羅氏は、「事業継続のリスクがすぐそこまで来ているはずなのに、頬被りして気づかないふりをしている」と指摘。リスクを正確に評価し、経営層に伝えられない企業は、結果的に変革の好機を逃してしまう。

 さらに、両氏は人材の問題を挙げる。齊藤氏は「レガシーな技術しか扱えない組織に、モダンな技術が入っていくことは考えにくい」と指摘。喜多羅氏も、こうした情報システム部門が、モダン化のボトルネックとなる可能性を示唆した。

 さらに喜多羅氏は、業務の取捨選択ができていないことも問題だと強調する。不要な業務を捨てられないことでシステムが膨れ上がり、融通が利かなくなってしまうというわけだ。

 これらの要因が複雑に絡み合い、レガシーシステムからの脱却が進まない状況が生まれている。しかし、このまま放置すればセキュリティリスクが高まり、新技術の導入が遅れるなど、深刻な問題に直面する可能性は目に見えている。齊藤氏は、「不確実性の高い世の中だからこそ、変化に富んだ柔軟性のあるインフラを手に入れるべき」だと、レガシーシステムからの脱却の意義を強調した。

レガシーシステム脱却に成功する企業に見る“3つの特徴”

 では反対に、レガシーシステムからの脱却に成功している企業にはどのような特徴があるのだろうか。両氏はいくつかの共通点を挙げた。

 まずは組織体制。喜多羅氏は、経営層、業務部門、情報システム部門が三位一体で取り組んでいる点を挙げた。レガシーシステムの刷新は単に技術的な問題ではなく、経営戦略と密接に結びついている。成功している企業では、経営層がシステム刷新の重要性を十分に理解し、投資を含め、適切な意思決定をしているという。

喜多羅株式会社 Chief Evangelist 喜多羅滋夫氏

 さらに喜多羅氏は、「成功企業では、既存業務をそのままシステム化するのではなく、業務自体の見直しと最適化を並行して進めている」とし、業務部門が主体となって既存の業務の取捨選択をすることの重要性を説いた。これにはリスクマネジメントの観点が有効活用できる。齊藤氏は、NISTのリスクマネジメントフレームワークの活用を提案する。自社のリスクを明確化し、どう対応すべきか、どのくらい投資するのかを具体的に示したほうが経営層や事業部門も検討しやすいと指摘した。

 次にプロジェクト推進。「取引先からの要請や業界標準の変化などの“外圧”をうまく利用して社内の理解を促進し、モダナイズしていくケースも見られる」と齊藤氏は話す。また、多くのレガシーシステムを抱える企業の場合、“ハイブリッド型”のアプローチが有効だという。これについて齊藤氏は「オンプレミスも残しつつ、クラウドに持っていけるものを持っていったり、APIで駆動できるようにしたりと、段階的なアプローチをしている」点を成功要因の一つとして挙げた。

 そして、最後に両氏が挙げたのは、“情報システム部門のあり方”だ。レガシーシステムの刷新に成功している企業の情報システム部門は、技術動向や他社事例に関する情報収集を積極的に行い、経営層に対して戦略的な提案を行うなど、変革の推進役として機能しているという。

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この記事の著者

酒井 真弓(サカイ マユミ)

ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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