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CentOS終了後の選択肢は? AlmaLinuxを支えるセレツキー氏に訊く、Linux市場の現在地

後継のLinuxディストリビューション、選択のポイントは「持続性」

ABI互換を選び、RHELよりセキュアになった

 もう一つ、AlmaLinuxは、RHELとのソースコードレベルでの互換性ではなく、RHEL上でコンパイルされたアプリケーションが、AlmaLinux上でも問題なく実行できることを保証する「ABI(Application Binary Interface)互換性」という路線を選んだ点も特徴的だ。

 コードレベルの互換性を担保する場合、RHELのソースコードをほぼそのまま利用するため、バグも含めて再現することで、RHEL上で動作するアプリケーションが同じように動作することを保証するものだった。当初、この方針での開発・運用を目指したが、AlmaLinuxはOSS業界におけるRHELの功績を評価し、互換OSとしてアップストリームの恩恵に授かるだけでなく、よりアップストリームとOSS業界に貢献するため、方針転換してRHELとのABI互換性を目指すことを発表。RHELと同じABIを持つように、AlmaLinuxを開発することとなった。

 この方針の転換について、「難しい選択でした」とセレツキー氏。完璧な互換性を目指すならばコードレベルで再現をしたほうがいい。とはいえ、ABIにしかないメリットもある。「バグがあった場合、RHELよりも先にパッチを提供することができます。加えて、古いアプリケーションを動かすこともできるのです」と説明する。

 青山氏も「実際、AlmaLinuxは、RHELよりも多くのバグを修正しています。脆弱性対応にも積極的です。(ABI互換性としたことで)AlmaLinuxはよりセキュアで、よりフレンドリーなOSになりました」と強調する。

 もちろん、基本的なOSとしての機能性は、どのLinuxディストリビューションを選択しても大きく変わるものではない。だからこそ、重要視すべきポイントは、長期サポートやセキュリティ認証の取得などであり、そのディストリビューションを製品ライフサイクルの観点から捉える必要がある。そうなれば「コミュニティが大きいかどうか、という点も重要になります」とセレツキー氏は言う。

 日本では、かなり古いCentOSを利用していたり、文字コードにShift JISを使っていてトラブルになっていたりするケースが未だにある。とはいえ、そうしたユーザーもLinuxを活用してビジネスを行っており、こうした日本特有の課題についても、日本のコミュニティでなるべく吸い上げて、コミュニティの中で一緒に解決する。AlmaLinuxでは、そうしたアプローチを今後積極的に取っていくという。

 「たとえば、ハードウェアのサーティフィケーションを気にするユーザーもたくさんいます。そのため、2024年9月にサーティフィケーション分科会が発足し、当社社員が複数活動しています。OSそのものではなく、プラスアルファでどのように手厚いサポートが提供できるか。そこがAlmaLinuxと他のディストリビューションとの大きな違いになるでしょう」(青山氏)

 なお、既にCentOSからAlmaLinuxへの移行は多数実施されている。「大規模な移行としては、CERN(欧州原子核研究機構)の例があります。金融機関をはじめ、大手企業もAlmaLinuxに移行しています」とセレツキー氏。日本では、インテージテクノスフィア社が、日本語でサポートを受けられる安心感に加え、サイバートラストのエンジニアがAlmaLinux の開発に参加していることなどを評価し、CentOSの後継としてAlmaLinuxを選択している。「AlmaLinuxはコミュニティで公開され、誰でも無償で利用できるため、我々が把握していないところでも既に数多くAlmaLinuxが使われており、今後もまだまだ増えるでしょう」と青山氏は話す。

 CentOSから移行する際は、ハードウェアの更新タイミングなどが多いため、新規にAlmaLinuxの環境を構築して利用を始めるケースも多い。また、既存のCentOSからの移行をサポートするため、コミュニティではElevateツールも用意している。もちろん、CentOSの環境上にさまざまなアプリケーションを追加している場合は、すべてがそのまま動くとは限らない。そうした既存環境からの移行については、CloudLinuxやサイバートラストのサポートサービスを利用すると安心だろう。

 「AlmaLinux OS FoundationのChairを務めるbenny Vasquez氏は、『RHELで動くものがAlmaLinuxで動かない場合はバグであり、すぐに直すので連絡してほしい』と公言しています。この一言に、AlmaLinuxの開発方針が表れていると思います。だからこそ、安心して使っていただきたいです」と青山氏。このように、しっかりとコミュニティやユーザーと向き合って開発しているLinuxディストリビューションこそ、AlmaLinuxだと言う。そして、“継続性”にも強くコミットしており、サイバートラストも責任をもって「AlmaLinuxを長く安心して利用していけることを担保しています」と自信を見せる。

 最後にセレツキー氏は、AlmaLinuxの高い信頼性こそが重要だと、あらためて強調した。だからこそ、エンタープライズ領域で評価されるLinuxディストリビューションであり、CentOSと同じではなく、それ以上にエンタープライズで活用できるものだと語るのだった。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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