ポイントは「持続可能な開発体制」 AlmaLinuxの優位性は?
RHELやCentOSを巡る一連の騒動を経て、日本のユーザーでは、Linuxディストリビューションを安定して提供し続けることは大変なのだという理解も深まってきた。一度採用したOSは、5年以上利用することが多い。そのため、“継続性”は極めて重要なポイントであり、その点を重視して移行先を選択するように変わってきたと青山氏は説明する。
そして、無償のLinuxディストリビューションをコミュニティベースで開発し、その継続性を確保するためには資金確保も重要だ。その点、AlmaLinux OS Foundationは既に25社を超えるスポンサー、400を超えるメンバーを抱えている。
青山氏の所属するサイバートラストも、そのうちの一社だ。Linuxディストリビューションの開発、そのサポートやセキュリティソリューションの提供において豊富な実績を持つ同社は、2023年5月にAlmaLinux OS Foundationに、日本企業初のプラチナスポンサーとして参画し、AlmaLinuxの共同開発を推進している。「こうした支援を得ることで、AlmaLinuxは長く継続できることを目指しています」と、セレツキー氏は自信を見せた。
ところで、同じようにコミュニティベースで開発を行っているRocky Linuxとは、どのような点で異なるのか。その大きな違いの一つとして、セキュリティに対する方針の違いが挙げられる。
たとえばAlmaLinux 9.2は、「FIPS 140-3」認証の取得を目指しており、既に一部モジュールでは認証を取得している。FIPS(Federal Information Processing Standards)は、米国政府が定めた情報処理に関する標準規格。FIPS 140は、暗号モジュールのセキュリティ要件を規定しており、FIPS 140-3認証を取得した製品は、米国政府機関などでの使用が可能だ。
FIPSへの対応について、「元々はCentOSが担っていましたが、そこをAlmaLinuxが担えるようになりました。一方でRocky Linuxは、FIPS認証を受けていません。この点において、AlmaLinuxに優位性があると言えるでしょう」とセレツキー氏は指摘する。
また、日本では、英語でのコミュニティ活動になれているユーザーが多くない。そのため、各ディストリビューションのコミュニティにおいて、日本の組織やエンジニアがどれだけ活動しているかも重視される。「日本では、日本語で相談できるコミュニティを選ぶ傾向が見られます。その点、AlmaLinuxは、サイバートラストで日本語サポートも提供しています。国内イベントを開催しており、日本のユーザー会も発足して活動しています」と青山氏は述べる。
このように国・地域に限定したサポートやコミュニティ活動を重視するのは、何も日本だけのものではないとセレツキー氏。ラテンアメリカや中東、アフリカなどでもローカルなコミュニティ活動が重視されるという。その上で、日本はサイバートラストが活動をリードしてくれるため、ユーザーの安心感は高いだろうとも話す。