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AI/MLプロジェクトはなぜ失敗するのか? 「5つの根本的原因」に対処するテラデータのアプローチ

「Possible 2024: Los Angeles」現地レポート

モデルのデプロイと運用に重要な「ライフサイクル」視点

 モデルを持ち込んだ後は、アプリケーションへのデプロイ、運用、モデルの改善へとプロセスは続く。このプロセスを円滑に進めるためには、モデルのデプロイと運用が何を意味するのかを明確にする必要がある。ランド研究所が挙げた失敗の根本的原因のうち、「4. モデルのデプロイや運用のためのインフラの不全」は、ライフサイクルの視点と同時に、1つのプラットフォーム上でライフサイクル全体での継続的なマネジメントを行うことの重要性を示している。

 アナリティクスでもAI/MLでも、ビジネスの意思決定に役立つインサイトを得る仕組みの構築は、エンジニアにとって知的で楽しくやりがいのあることだが、そこで満足するべきではない。そもそも企業がアナリティクスやAI/MLを活用しようと考えるのは、テクノロジーにビジネス価値創出の機会を見出したからである。本来の目的を達成するには、自社のビジネスにあわせてモデルをアプリケーションに用い、ビジネスユーザーからのフィードバックを得て、モデルを改善するという「継続的なマネジメント」ができる環境が必要だ。

 テラデータでは、こうした「ModelOps」をサポートするためのツールセットへの投資を続けている。ModelOpsとは、モデルのライフサイクルをエンドツーエンドで管理することだ。ウィルコックス氏は、「ModelOps とは、より多くのモデルをより迅速に本番環境にデプロイできるようにすること」と説明し、テラデータではモデルの本番環境へのデプロイや運用もサポートしていると訴えた。具体的には、2022年8月から提供を開始したTeradata Vantage ClearScape Analytics(以降、ClearScape Analytics)がそのための環境を提供する。ClearScape Analyticsは、前述のBYOAやBYOMでツールやモデルの持ち込みができるだけでなく、継続的なライフサイクルマネジメントができるよう、デプロイや運用を1つのプラットフォーム上でサポートしているものだ

Martin Willcox(マーティン・ウィルコックス氏), SVP WW Sales Analytics, Teradata
Martin Willcox(マーティン・ウィルコックス氏), SVP WW Sales Analytics, Teradata

 事例としてウィルコックス氏が挙げた企業では、モデルの本番環境へのデプロイに課題を抱えていた。モデル資産が多いほど、モデルのトレーニング、スコアリング、デプロイの負担が増えてしまう。データサイエンスチームを増強すれば目先の問題は解決するものの、持続可能ではない。その状況を改善したのがClearScape Analyticsの利用だったという。

プロジェクトのスケーリングで重要になる「ポートフォリオ管理」

 残る2つの課題のうち、「5. 解決困難な難しい問題へのAI/MLの適用」は、テクノロジーの適用領域が問題に合致していない状況にあることを示している。ウィルコックス氏は、Possible 2022におけるCEOのマクミラン氏の発言を引用し、「AI/MLを活用したビジネス変革には3つの方向性がある」と説明した。1つ目は「オペレーションの最適化」で、需要予測、価格最適化、予防保全、解約予測などのユースケースがこれに該当する。2つ目は「製品やサービスの刷新」で、住宅ローンの申し込みプロセスの体験改善に生成AIアシスタントを導入するようなユースケースなどが該当する。3つ目は、これまでになかったまったく新しいビジネスや市場を創出することだ。

 既存のテクノロジーでは解決できない本当に難しい問題を除き、プロジェクトを分類して管理することは、適用するテクノロジーが正しいのか、その判断に役立つ。「実際にAI/MLプロジェクトで成果を出している企業は、ポートフォリオ管理を導入し、それぞれのプロジェクトの進捗を管理している」とウィルコックス氏は指摘した。予測アナリティクスや機械学習を使うにしろ、生成AIを使うにしろ、どのテクノロジーを採用するかは手段の話で、企業がやりたいことは価値創出のはずだ。「最高のモデルとは、ユースケースに対して常に最もシンプルなものであることを忘れてはならない」とウィルコックス氏は語った。

 最後に残った「1. 解決したい問題についての誤解やコミュニケーションの失敗」に関しては、AI/MLのライフサイクルを考えることが解決の役に立つ。ウィルコックス氏は、「ビジネスチームはAI/MLモデルの構築プロセスが反復的かつ漸進的であることを理解するべきで、データサイエンスチームは、ビジネス課題をデータレベルではなく文脈レベルで理解するべきだ」と述べた。テラデータでは、データサイエンス組織の生産性を高め、組織が価値を得るまでの時間の短縮に貢献したいと考えている。イベント全体を通して、技術的な負債を増やすことなく、テクノロジー活用の柔軟性を提供することを強調していた。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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