初の都心型データセンター、その機能性は
エクイニクス・ジャパン(以下、エクイニクス)が2024年9月に提供を開始したのは、「TY15」という最新型のデータセンターだ。同社では、東京と大阪に16棟のデータセンターを構えており、“キャンバス”という単位で統合・管理をしている。
都内では、文京・大手町キャンバス、豊洲・有明キャンバス、品川キャンバスという形でゾーニングしており、今回TY15が設けられたのは品川キャンバス・港南エリアだ。これまで「TY11」が最新のデータセンターであったが、完全稼働時には首都圏エリアで最大規模となる、3,700キャビネットの収容能力を備えるなど、機能性を拡充した初の“都市型データセンター”となった。
従来、エクイニクスがグローバルで展開してきた「Equinix International Business Exchange(IBX)」は、エンタープライズ/サービスプロバイダーに向けて、低遅延を重視した設計である一方、千葉県印西市などに開設している「xScale」は、ハイパースケーラー向けにパワーデンシティを考慮した形だ。そして現在、急速に高まっている「AI/HPC」用途を中心とした新たなニーズに応えるためのデータセンターが、今回紹介するTY15である。
まず驚くべきは、都心型データセンターを謳っているだけあり、タワーマンションに囲まれた立地に存在するという点。景観を害さないようにファサードが設けてあり、エントランスには木材がふんだんに使われている。
そうした外見とは裏腹に、ある程度のレイテンシーは担保しつつ、パワーデンテシィーも必要十分なスペックとなっていた。もちろん、xScaleほどのパワーデンシティはないというが、前述したニーズを満たすためのスペックは確保されている。特に「TY2」「TY6」などを要する品川キャンバスに位置しているため、クラウドサービスにも低遅延でアクセスできる点は、既存ユーザーにとってもメリットが大きいだろう。
また、TY15には、大容量UPSやスラブフロア、液体冷却などが採用されており、TY12xやTY13x、OS4xなどで培ってきた知見が十分に活きている。
先述したようにエントランスの木材が印象的なTY15は、サステナビリティに配慮されており、高効率の空冷式チラーを採用したことで省電力化(年平均PUE:1.32)、WUE(Water Usage Effectiveness:年間の水使用量)についても検証を推進。LEED認証を取得予定であり、みなとモデル⼆酸化炭素固定認証制度に基づく国産⽊材が使われているとのことだ。加えて、ユーザーはどれだけ電力を消費しているのかなどの項目をポータルの画面上で確認できるという。
なお、屋上には、熱源設備が設けられており、排熱再利用の一環として「芋緑化」にも挑戦している。サツマイモの品種は「紅はるか」、サステナビリティに配慮された都心型データセンターの味がどのようなものか気になるところだ。