みずほFG/SUBARUが抱えていたデータサイロ化の課題
データドリブン経営を進めていくためのアプローチは各社各様だ。実際に現場や経営が抱える課題に向き合い、全社ごととして組織横断で取り組む必要がある。今回は現在進行形でデータマネジメントに取り組んでいる3人の異業種リーダーが集い、実際にデータがサイロ化したことで起きていた課題、その課題へのアプローチ方法、そしてデータが整備されたことでどのような効果が生まれたのかについて語られた。
まずは、みずほFGの新田氏が自組織の課題について言及。同グループの中核となるみずほ銀行には長年使われているシステムやデータがあり、共通データ基盤も存在していた。しかし、「管理ルールや使い方の共通認識が欠けたまま運用していたため、データ辞書や品質管理に課題が生じ、どのシステムにどのような定義のデータがあるのか把握が困難になっていました」と当時の状況を振り返る。
ユーザーにとって使いにくい共通データ基盤は形骸化し、次第に活用されなくなってしまう。そうなると事業部門は、収集したデータを保管する共通データ基盤をローカル環境にそれぞれ構築するため、基盤が乱立する。結果として、データのサイロ化が進んでしまうのだ。みずほFGでも部門間のデータのやりとりはExcelを駆使してバケツリレーのごとく行われていたという。結果的にデータの定義を確認したり、品質を保証したりするために無駄な人的作業が多数生まれ、データ活用の阻害要因となっていた。
一方、「4~5年前のSUBARUでは、データはサイロにもなっていなかったです。たとえるなら牧場に所々に転がっていている麦わらのような状態。サイロに収納されているものも一部見られたものの、ほとんどのデータが野放しの状態でした」と語るのはSUBARUの野口清成氏だ。このような状態では新しくシステムを作ろうとしてもそこで新たな“麦わら”ができてしまう。
このような状況になった要因として、野口氏は縦割り型の組織構造を挙げる。こうした組織では部門間で業務が明確に分けられているため、部門ごとに仕事を確実に終わらせようとする意識が強いという特長がある。一方でデータ活用の観点からみると、データが部門に閉じてしまうことで部門やシステムを横断したデータ活用が難しいという難点も出てくる。
みずほ:3構造のタスクフォースで本格始動へ
このような課題に対して、2つの組織はどうアプローチしていったのか。みずほFGでは、ユーザー部門やIT部門を巻き込み、データマネジメント態勢の高度化を目的としたタスクフォースを組成。まずは何が課題か、あらためてファクトを整理するところから着手したという。
このタスクフォースでは、データマネジメントを「データ利活用(各事業部門)」「データガバナンス(コーポレート部門)」「データアーキテクチャ(システム部門)」の3構造で捉えている。それぞれ関係する部署のメンバーや役員を揃え、認識を共有して議論を進める。新田氏は「データマネジメントは壮大な課題のため、我々の部署(デジタル企画部)だけでやりきれるテーマではないと思いました」と話す。それぞれの部門で起きている苦労を開示し合うことで「これは何とかしたい。一緒にやっていきましょう」と結束が深まっていったという。
たとえば、ユーザー部門ではデータを活用するために苦労しており、システム部門ではビジネス部門でシステムがサイロ化していることでシステム全体のコスト高につながっていることを問題視していた。一方、コーポレート部門ではデータ整備が進んでいないことでレポーティングのミスが発生してしまう問題もあったという。このように各部門が悪戦苦闘している課題を共有していったと新田氏。