「経営者に振りまわれて困る……」実は最大のチャンス
ここからは会場参加者から寄せられた赤裸々な質問をいくつか紹介する。
──経営者が思いつきでIT導入を指示してきた場合、どのように断りますか?
喜多羅:経営者の思いつきって、実はすごく大きなチャンスだと思うんです。考えてみてください。経営者は日々、様々な経営課題に追われていて、持ち時間の5%でもITのことを考えられたらいいほうでしょう。そんな中で思いついてくれるなんて、むしろ素晴らしいこと。切り捨てるのではなく、なぜそう思いついたのか詳しく聞いて、建設的な方向に持っていくほうが良いと思います。
長谷川:経営者の思いつきと言うけれど、業務理解の薄い情シスがニーズを理解できていない場合もありますよね。まずは経営者の本気度を図る。少し寝かせて、それでも言い続けていたら本気。もしくは、経営者の思いつきに対する現場トップの反応を見る。現場も賛成ならやり方を考える。微妙なら、一緒に経営者が忘れてくれるのを待つ。
友岡:私は、この経営者と情シス部門の関係性のほうが気になりますね。経営者と日常的に対話し、ITトレンドに関するレクチャーなどをしていると、指示の前に相談があるはずなんです。普段からコミュニケーションが少ない、もしくは欠けているから、「突然指示が来た」となってしまうのではないでしょうか。
「情シスの地位を上げるには」という不毛な議論
──情シス部門は社内での地位が低いと感じることがあります。地位向上のために意識されてきたことはありますか?
喜多羅:成果を出す。ただそれだけです。地位が低いと感じる背景には、「情シスには何の相談もなく、全部決まってから降ってくる」といったことがありますよね。これって結局は信頼の問題なんです。経営目線で話ができない、期待に応えられないなど、これまでの積み重ねが影響している。
営業部門には分かりやすい価値があります。売上を作ってくれる。では、経営者から「この1000万円、情シスではなく営業に投資すれば、もっと売上が上がるのに」と言われたとき、あなたならどう返しますか? これは単なる予算の取り合いの話ではありません。情シス部門への投資が会社にもたらす価値を、具体的な数字や成果として示せるか。「この1000万円を情シスに投資すれば、こんな価値が生まれ、こんな成果につながる」と言い切れるだけの覚悟を持って、成果を出せるかという話なんです。
長谷川:情シス部門と営業部門の地位がひっくり返ることは、一生ありません! 情シス部門が社内でナンバーワンになることもない。経営からすれば当然のことで、地位が欲しいなら営業部門に行けばいい。地位云々を気にするよりも、「こいつら最高だな」と全幅の信頼を寄せられるチームを目指しましょう。
友岡:情シス部門の地位なんて、そもそも議論すること自体おかしい。議題にすべきは事業貢献であって、地位なんか気にする時点で本質から外れてしまっている。私たちが考えるべきは、営業部門が抱えている課題は何か、それにどう貢献できるのか、ではありませんか。