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【SAP×Databricks】戦略提携の意図は?──Business Data CloudとAIエージェントで400シナリオ実現へ

Insight Applicationsからデータセットへのリアルタイムアクセスを実現

 SAPのアプリケーションは、ファイナンス、人事、調達、サプライチェーンなどの各領域で、グローバル企業のビジネスバリューチェーンを支えてきた。また、数十年にわたって蓄積してきた専門知識を基に、企業の業種業態の相違に合わせてビジネスプロセスを調整する取り組みも続けてきた。「組織が複数のクラウド環境や複数のデータプラットフォームにデータを持つ世界では、相互運用性とオープン性が重要な成功要因になる」と、アラム氏は述べ、Databricksとのパートナーシップで、SAPユーザーは外部アプリケーションのデータに「ゼロコピー」「ゼロETL」でアクセスし、SAPのデータと調和させて利用できるようになったことを強調した。

SAP製品エンジニアリング担当エグゼクティブボードメンバー ムハマド・アラム氏
SAP製品エンジニアリング担当エグゼクティブボードメンバー ムハマド・アラム氏

 SAP Business Data Cloudは、単に外部のデータへの透過的アクセスを提供するだけにとどまらない。SAPデータと外部のデータを、セマンティック統合でビジネスに意味のある形に整理し、「データプロダクト」として提供する。ここでのデータプロダクトとは、ガバナンスの効いた信頼できるデータセットである。「製品」として提供されるため、誰が利用しても一貫性のあるインサイトを得られる。

 これまではデータニーズが発生するタイミングで、その都度、データエンジニアリングチームがデータの複製や抽出のようなデータ準備作業を行う必要があった。その負担は非常に大きなものだ。代わりにSAPが再利用可能なデータプロダクトにパッケージングして提供することで、貴重なリソースをもっと重要な仕事に振り向けられる。また、ビジネスユーザーのアナリティクス活用も進むだろう。クライン氏は「データプロダクトを利用することで、アナリティクスユーザーは既成概念にとらわれず、信頼性が高く、より深いインサイトを活用できるようになり、AIのポテンシャルを最大限に引き出すことにもつながる」と説明していた。

 SAP Business Data Cloudの提供開始により、これまで提供してきたデータ統合基盤製品のSAP Datasphere、アナリティクス製品のSAP Analytics Cloud、データウェアハウス製品のSAP Business Warehouseが統合され、「Business Data Fabric」として生まれ変わった。さらに、ビジネスが求めるスピードに対応するため、SAP Business Data Cloud内にすぐに使えるアナリティクスアプリケーション「Insight Applications」を用意した。Insight Applicationsには、データプロダクトを通して、リアルタイムのビジネスデータにすぐに接続できる事前定義されたメトリクスとアナリティクスが組み込まれている。ビジネスユーザーは、Insight Applicationsの利用を通して、意思決定に必要なインサイトを即座に得られる。

図2:SAP Business Data Cloudが提供するInsight Applications 出典:SAP [画像クリックで拡大]

Joule Agentsの基盤にもなるSAP Business Data Cloud

 誰もが信頼できるデータプロダクトを使って仕事ができるのであれば、人間だけでなく、AIにも同じ価値がもたらされるはずだ。SAP Business Data Cloudは、ビジネスユーザーが使うInsight Applicationsを提供するだけにとどまらず、AIにも基盤になる環境を提供する。

 2025年2月時点で、SAP Business AIでは130超のAIシナリオを提供している。これを2025 年末までに400シナリオに増やす計画を進めているところだ。SAP Business Data Cloudを基盤として使うことで、AIアシスタントのJouleは、より多様で豊富なデータセットにアクセスし、より深いインサイトを得て、より複雑なビジネス上の問題を解決する。あるいはよりスマートな提案を行うことができるようになる。たとえば、SAP内の顧客の支払い履歴に関するデータと外部の信用格付けのデータを組み合わせたデータプロダクトを使えれば、Jouleはよりスマートな支払い条件の提案をしてくれるようになるだろう。

 ここまでは生成AIのユースケースの話だ。SAPではAIエージェント「Joule Agents」の実装も進めている。SAP Business Data Cloudは、AIエージェントに、人間の担当者の関与を最小限にしつつ、複雑なワークフローを自律的に制御する環境を提供してくれる。「私たちは、サプライチェーン、調達、ファイナンスなど、すべてのコアビジネス機能のためのエージェントをJouleに取り入れている。これらの Joule Agentsは、SAP Business Data Cloudからインサイトを得て、担当者に代わってアクションを実行できる。要するに、私たちはJouleをスーパーオーケストレーターにしている」とクライン氏は述べ、「クレームマネジメント」「セールス」「カスタマーサービス」のJoule Agentsの提供開始を発表した。

 これらのエージェントは、それぞれ「クレームの迅速な解決」「セールスエンゲージメントのスピードと品質の向上」「顧客からの問い合わせの効率的な処理」という役割を担う。今後、Joule Agentsは、人事、サプライチェーン、支出管理、ファイナンスなどの領域への実装を計画している。Jouleは、SAP Business Suite全体にわたるシームレスな統合レイヤーになった。

次のページ
Agent BuilderでJoule Agentsのカスタマイズも可能に

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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