大井弁護士が示す、CIO/CISOが意識すべきリスク管理2つの視点──脆弱性の除去と転化を実現する術
アタッカーが有利なサイバー攻撃の市場、我々が今からできる対策は何か

昨今、企業による情報漏えいインシデントが相次いでいる。こうした事案は、単に被害者への補償が必要となるだけでなく、自社の業績に莫大な影響を与えるとともに、経営層個人への多額な損害賠償にもつながりかねない。とはいえ、取り組むべきポイントは多岐にわたる。一体どのような軸を持ち、対策に動けば良いのか。2025年3月18日に開催されたイベント「Security Online Day 2025 春の陣」での大井哲也弁護士による講演「CIO/CISO・IT部門長が押さえておくべきサイバーセキュリティにかかる法的責任と対応策」をもとに、そのヒントを探る。
見るべき脅威は、個人情報の漏えいだけではない
TMI総合法律事務所のパートナー弁護士として、国内の個人情報保護法や欧米などの個人情報に関する法律への対応支援を行う傍らで、TMIプライバシー&セキュリティコンサルティングの代表取締役も務める大井哲也氏。法律事務所での活動が主に企業の「守り」に関する支援であることに対し、TMIプライバシー&セキュリティコンサルティングは「攻め」に関する支援を行う。
「個人情報保護法などの法対応をするうえでは、システムの実装も不可欠です。そういったニーズに対して『攻めのデータ利活用』を支援するサイバーセキュリティ専業の企業として運営しています」(大井氏)

TMI総合法律事務所パートナー弁護士
TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング株式代表取締役
大井哲也氏
たとえば、カスタマーデータプラットフォーム(CDP)はその1つだ。これ以外にも、データマネジメントプラットフォーム(DMP)や、サイト訪問者に対するクッキーデータや閲覧利益の取得可否を問うコンセントマネジメントプラットフォーム(CMP)などが該当する。このほか、データマッピングに各種システムの導入、セキュリティアセスメントなど同社の事業領域は幅広い。
近年は大規模なデータ漏えいがニュースになることも多く、企業側の危機感も高まっている。一方で、まだリスク把握が不十分な領域もあるようだ。
「当社は世界各国の法対応にともなうシステム導入支援などを行っています。そうした活動をする中、各社で個人情報の漏えいに対する危機感が高まっている一方、そのほかの領域にはなかなか目が向いていないと感じることが多いです。
たとえば、企業が扱うデータは技術情報や特許、製品の生産ノウハウ、さらには営業メンバーの持つインサイダー情報など。これらは国内であれば個人情報保護法と異なり、不正競争防止法が関係する領域のものです。個人情報ももちろん重要なのですが、不正競争防止法の管轄であるデータと両輪でマネジメントに取り組んでいく必要があります」(大井氏)
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鬼頭 勇大(キトウ ユウダイ)
フリーライター・編集者。熱狂的カープファン。ビジネス系書籍編集、健保組合事務職、ビジネス系ウェブメディア副編集長を経て独立。飲食系から働き方、エンタープライズITまでビジネス全般にわたる幅広い領域の取材経験がある。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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