「Agentspace」を強化、“AIエージェントのハブ”に進化する
Google Cloudは、先述したAIモデルに関するアップデートだけでなく、「AIエージェント」戦略も急ピッチで進めている。昨年の年次イベントでは、Vertex AIにAIエージェントを構築できる「Agent Builder」を発表、同年12月にはAIエージェントのプラットフォームとなる「Google Agentspace」を発表した。

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今年は、Agent BuilderでのGoogle Mapsによるグラウンディングが発表された。これはGoogle検索によるグラウンディングに続くものであり、Google Mapsが擁する「世界2億5000万以上の場所に関する最新情報を活用できる」とクリアン氏は説明する。
あわせて同氏は、100行未満でAIエージェントを構築できるというエージェント開発フレームワーク「Agent Development Kit(ADK)」、ADKから直接アクセスできる「Vertex AI Agent Garden」、エージェント間の通信プロトコル「Agent2Agent Protocol(A2A)」をオープンソースとして公開することも発表した。
中でも注目すべきは、A2Aだろう。各社がAIエージェントをプッシュする中、AIエージェント間の相互運用性が問題になることは容易に予想できる。A2Aは、AIエージェントが自身の機能を公開し、インタラクションの方式を“交渉”しながら安全に連携できるプロトコルだとして、「基盤となる技術に関係なく、AIエージェント同士が互いに通信できる」とクリアン氏。既にSAPやSalesforce、ServiceNowをはじめとする、50以上のベンダーから賛同を取りつけている。

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Agentspaceの機能強化としては、ノーコードのエージェント構築ツール「Agent Designer」、Googleや自社およびサードパーティーのAIエージェント(パートナー提供のエージェントはプレビュー機能)を集めた「Agent Gallery」が GAになったほか、NotebookLMやGoogle Chromeとの統合も発表された。Agentspaceでは検索や理解、アクションなどの機能だけでなく、100以上のコネクタを有することで「すべての従業員がAIエージェントを活用できる」世界を目指すという。

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なおイベントでは、金融業のアカウントマネージャーを想定したデモが行われた。AIエージェントを用いて顧客のポートフォリオをチェックし、リスクや投資機会を分析するという毎朝のタスクを効率よく自動化してみせた。

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Agentspaceは単にレポートにある情報を要約するだけでなく、ユーザーにとって重要な情報を自動表示できる点が特徴的だ。デモでは、将来的にキャッシュフロー上の問題が起きそうな企業に自動でフラグを立てると、該当企業の情報に注視するためのレポートを毎朝自動的に生成するAIエージェントを作成することを提案。これに加えて、オフィスまでの通勤時間に生成されたレポートを読み上げるためのAIエージェントも簡単に作成してみせた。

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「Agentspaceにより、1ヵ所から社内のデータやツールにアクセスし、会話ベースでAIエージェントを構築できる。(Google検索とGemini 2.5を活用することで)サードパーティのデータやツールとの接続、サードパーティのAIエージェントとの相互運用性も担保しているハイパースケーラーはGoogle Cloudのみだ」(Google Cloud 開発者アドボカシーマネージャー Gabe Weiss氏)

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また、2025年2月に提携を発表した、SalesforceのCEO マーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏も「Geminiを利用したAgentforceをはじめ、GoogleとSalesforceは統合を実現していく。2社で“デジタル労働者(Digital Labor)”の革命をリードする」とコメントを寄せた。

ほかにもイベントでは、AIインフラとして新世代のTPU「Ironwood」、Googleのネットワーク技術を顧客に提供する「Cloud WAN」なども発表された。Google Cloud Nextのイベントテーマは今年も「The New Ways to Cloud(クラウドへの新しい道)」だ。マルチクラウド、マルチエージェント、セキュリティなどの領域においてGoogle Cloudの戦略を示したクリアン氏は、「Google Cloudは最高のインフラストラクチャ、最先端のAIモデル、ツール、AIエージェントを備え、エンタープライズ向けのAIに最適化されたプラットフォームを提供する。顧客はこれを利用して、自社のイノベーションを進めることができる」と述べた。

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「オープンなマルチクラウドプラットフォームを提供し、相互運用性を担保することで、AIが価値を生み出すまでの時間を短縮する。クラウドへの新しい道筋を構築できることを光栄に思う」(クリアン氏)