AI導入でかえって業務を増やしていないか? 成功企業と失敗企業の差は「プロセスデザイン」にあり
単なる工数削減はもう古い、タスク代替に終わらないAI活用のポイントとは

「AI」を導入したものの、想定していた効果を上げられていない……そのような企業に有益な方策の一つが、最適な業務プロセスを構築するための「ビジネスプロセスデザイン」という考え方です。連載『AI活用の真髄──効果的なプロセスデザインとビジネス変革』では、“業務コンサルタントの視点”でAI導入を支援している小坂駿人(パーソルビジネスプロセスデザイン所属)が、AIを「真のビジネス変革」につなげるためのポイントを5回にわたって解説。第1回は、企業におけるAI活用の実態を紐解きながら、課題解決に向けたアプローチについて考えます。
AI導入企業における“不都合な真実”──利用率と効果の視点
「生成AI元年」といわれた2023年以降、生成AIの活用に積極的な姿勢を示す企業が増えています。PwCコンサルティング合同会社が、売上500億円以上の日本企業・組織の従業員を対象に行った『生成AIに関する実態調査2024 春』によると、社内外で生成AIを活用していると答えた割合は約4割、推進・検討中の回答を合わせると約9割にのぼっており、生成AI導入に対する関心の高さがうかがえます。
その背景にあるのは、“業務効率化”への期待です。デロイト トーマツ グループ合同会社がプライム市場に所属している売上1000億円以上の企業の部長クラス以上、1,200名を対象に実施した『プライム上場企業における生成AI活用の意識調査』によると、生成AIの活用目的は企業規模や業界を問わず「業務の効率化」が圧倒的で、全体の約77%にのぼっています。そして同調査によれば、生成AIの利用割合が高いほど、社内での意思決定スピードの向上を実感する傾向にあることがわかります。

『デロイト トーマツ、プライム上場企業における生成AI活用の意識調査~社内の利用割合が高いほど成果を感じる』(2024年5月30日、デロイト トーマツ グループ合同会社)
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しかし同時に同調査では、生成AIの利用割合が低く、変化を感じられていない企業が多いことも明らかになっています。生成AIを利用する社員が半数未満だと答えた人は、全体の約7割にのぼり、さらにその約8〜9割が意思決定スピードは現時点で変化していないと回答しているのです。

『デロイト トーマツ、プライム上場企業における生成AI活用の意識調査~社内の利用割合が高いほど成果を感じる』(2024年5月30日、デロイト トーマツ グループ合同会社)
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このような事象は、生成AIのみならずAI全般にも認められます。すなわち、AIを導入する企業は増えているものの、導入後の利用率と導入効果に差が生じてきたのです。これはAIが決して「魔法の杖」ではなく、導入したところで、必ずしも業務を効率化できるわけではないことを示唆していると言えるでしょう。
では、AI導入後に利用率が上がって効果を感じている企業と、そうでない企業は何が違うのか。そのヒントは、業務プロセスを最適化する「ビジネスプロセスデザイン」にあります。
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- この記事の著者
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小坂 駿人(コサカ ハヤト)
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社
ビジネストランスフォーメーション事業本部
データコンサルティンググループ 兼 ゼロ化コンサルティンググループ マネジャー2021年、パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社に入社。前職ではHR業界における事業戦略/新規事業開発部門に所属。2022年には、...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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