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日米の安全保障の基盤そのものが揺らぐ恐れも‐‐森本敏氏が提言する、日本の危機管理の課題と普天間問題

過去の教訓を共有し、危機管理体制を構築せよ


 近年、日本社会は営利団体や経営者による偽装・詐欺・不正・秘密漏洩などの不祥事やパンデミック、サイバーテロなど様々な脅威・リスクに直面しており企業にとっても危機管理は大きな関心事となっている。一方、国家においても、危機管理は国民の生命・安全のために欠かせない最重要課題であることは言うまでもない。日本における危機管理と安全保障研究の第一人者である森本敏氏に、国家と企業においての危機管理の意義と課題についてお話を伺った。

インテリジェンスに従事する人はインテリジェンスだけで生きるべき

― 情報漏洩や偽造などの不祥事や、パンデミック、サイバーテロなど企業は様々な脅威にさらされており、危機管理は企業の存続にとって重要なキーワードになっています。まず、危機管理の概念について教えてください。

拓殖大学海外事情研究所長 森本敏氏
拓殖大学海外事情研究所長 森本敏氏

 

 危機管理の概念を考える時に、まず、その主体がもっている本来の機能や目的があります。つまり、企業なら企業利益をもって社会に貢献するという目的がありますし、国家であれば、国家の主権を守り、領土を保全して国民の生命財産や経済的繁栄を維持するという国家の目的があるわけです。

 その目的を阻害したり、障害を与えたりする要因、それを脅威とかリスクと呼んでいるのですが、それを「いかに早期に発見して、阻止・排除し、損害を局限するか」というのが危機管理の大前提です。

 そのための基本的な機能としてまず最初にやることは、「情報の機能」をきちっとすることです。その次には「体制の整備」です。これを行うためには規則・法体系を整備し、それを実行できる組織を作って、運営方針を確立しておくことが重要です。

 情報の機能とは大きく分けて、第一に情報を収集する機能、第二に評価・分析する機能、第三に、情報を報告し、配布する機能、つまり、意思決定する人に報告する、あるいはその関係者に連絡をする、通知をする、配布をする機能です。なんのために報告するかというと、適切な判断をしてもらうための材料とするためです。

 もちろん、不要な情報を出すことは意味のないことであり、決断をする人にとって、常に一番最適な時期に、最も内容の充実した情報を提供するためには、その情報の中身を評価・分析する際に、「早く、多量に、正確に」という要件を満たしていることが不可欠です。

 この3つの要素は実は矛盾しています。早い情報はまず間違っていることが多いし、多量な情報の中には粗雑な情報も混ざっており、情報が一つだけしかなかったら、そもそも判断の材料にならない。多量に正確な情報を早く、というのは論理が矛盾します。しかし、これをやらなければ情報にはならないので、情報の収集というのは情報活動の8割を決めてしまうと言われるぐらい重要な作業です。

 また、何のために情報が必要かというと、最終的な意思決定者にとって、最も意思決定に資するような情報がいつでも適切に提供されている必要があるため、情報を評価・分析する人は、自分の恣意を入れてはいけません。情報というのは、あくまで情報担当者ができるだけ事実に基づいて客観的なものを出さないといけない。

― 特定の組織に属していながら、自分の恣意を入れず、客観的に情報を評価・分析するというのは、実際にはとても難しいことではないでしょうか。

 情報というのは英語で言うと、インフォメーション(Information)とインテリジェンス(Intelligence)と2つあって、両者の意味合いは全く異なります。インフォメーションというのはファクト(事実)、インテリジェンスというのはクライテリア(評価基準)があり、クライテリアに基づいてある意図をもってインフォメーションを評価・分析したときにインテリジェンスになるわけです。

 しかし、ここで言う「情報」にはその両方の要素が含まれていないといけません。例えば、事件・事故が発生した場合、適切なインフォメーションとインテリジェンスが届けられて、意思決定をする人に最も有益な情報が正しく、迅速に、しかも多量に届けられなければいけない。そして、情報を評価・分析する人は、自分の恣意を入れてはいけないわけですね。

 ですから、情報を担当する人は、本来は情報だけで生きるべきなのです。例えば、国家公務員として採用された行政官が国家の情報分析をします。本来は、一生それで終わるべきなのです。アメリカのCIA要員のように。しかし、日本では情報担当者はまた行政官の職に戻ってきます。行政官には、こういう情報を提供したら意思決定者がこういう判断をするというのが簡単に分かるわけで、情報分析に恣意を入れる可能性がある。

 そういうことをやると本当のインテリジェンスになりません。インテリジェンスというのはあくまで、情報をできるだけ客観的にあるクライテリア(評価基準)をもって提供し、最終的な意思決定者に決断を委ねる。国家でも会社でもそうですけど、インテリジェンスをやる人は原則として、会社の経営部門に置いてはいけません。インテリジェンスはインテリジェンスで生きていかないといけない。

 アメリカの場合は決して、情報をやっている人を実際の政策決定の中に入れません。情報をやる人は、情報の仕事で一生を終わって、場合によっては、その仕事で身に付けたスキルを活かして、民間のシンクタンクやコンサル会社などで生きていきます。

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日本人は恥の文化教訓を共有するという勇気

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この記事の著者

渡黒 亮(編集部)(ワタグロ リョウ)

翔泳社 EnterpriseZine(Security Online/DB Online/Operation Online) 編集長大学院を卒業後(社会学修士、中学・高校教諭専修免許状取得)、デジタルマーケティング企業にてデータアナリストとしてCRM分析・コンサルティング業務に従事。2007年4月翔...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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