攻めと守りを両立させたIT投資の最適化術──CIOを悩ます「部門の分断」問題を解決する一手とは
部門を跨いだ“共通言語”の役割を果たす「TBM」とは何か?
ITインフラ刷新でTBMを実践する際に、押さえるべき2ステップ
ここからはITインフラのモダナイゼーションに焦点を絞り、IT投資を最適化するための方法を考えていこう。先述したTBMの考え方と、クラウドファイナンス管理のベストプラクティスである「FinOps」を踏襲しながら具体的な実践方法を捉えたときには、2つのステップを踏まなければいけないという。
1つ目のステップは、テクノロジーコストの透明性と可視化の実現だ。これは、企業におけるクラウド支出の詳細を明らかにすることで、財務部門、IT部門、ビジネス部門それぞれの視点からコストを可視化し、共有された状態を作り出すことを意味する。
田中氏は「クラウドコストの総額を部門やアプリケーション、サービス、プロジェクトに配賦し、可視化することが最初にとるべきアクションとなる」と説明。これにより利用部門へのチャージバックやショーバック(コストの明示)が可能となる。
また、可視化の精度を高めるには「タグ」の活用が重要だ。アカウントとタグを併用し、各部門やプロジェクトに割り振ることで、詳細なコストを把握できる。このタグ付けを推進する際には、ポリシーやKPIを設定し、実際にタグ付けを行うエンジニアにインセンティブを与えることも考慮すべきだ。
さらに予算策定では、単に前年度予算を踏襲するだけではなく、コスト削減目標やユニットエコノミクス(ビジネス指標)に連動して設定することが望ましいという。たとえば、「売り上げが何%上がったため、クラウドの予算も何%アップさせる」といったようにビジネス指標と連動させることで、より戦略的な予算管理が可能となる。
2つ目のステップは、最適化のアクションだ。具体的には、以下3つのアクションが求められる。
IT予算と統制(予実差解消、予測管理)
予算修正や過去の支出状況からクラウドコストの予測を行う。具体的には、従量課金制のクラウドに対応した予算修正や、支出状況からリアルタイムで予測値を把握する必要がある。
コスト最適化(ムダの排除)
余剰や過剰リソースのライトサイジング(適切な規模への調整)を行い、クラウドサービスの単価を下げる購買方法を採用する。クラウドコストの最適化には利用量(Volume)と料金体系(Rate)を意識する必要がある。
利用量の最適化においては、サイジングの見直しや不要な仮想マシン(VM:Virtual Machine)の停止などを進めることが重要。これはインフラのパフォーマンスに影響しうるため、アプリケーションオーナーやインフラ担当者が判断・実行する「分散型アプローチ」が推奨される。一方で、長期間の利用を予約するリザーブドインスタンス(RI)や、大量購入によって金額を安く留めるボリュームディスカウントなどの料金交渉や契約見直しには、「集中型アプローチ」が最適だ。
利用部門との関係性改善(協力関係の構築)
クラウドコストをビジネス価値と紐づけ、利用者に対して明細情報を開示または請求する。田中氏は「このアクションが最も重要だ」と述べる。IT投資がビジネスにどのように貢献しているかを明確にできるためだ。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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