【ガートナー】エージェンティックAI時代のアプリケーション調達戦略/フランケンスタックの罠にはまらない方法とは?
ガートナー ジェイソン・ウォン氏 インタビュー
今後の調達方針に影響しそうなアプリケーションベンダーの戦略シフト
──最近のAI動向を追いかけていると、アプリケーションベンダーが変革を始めたと感じる。主要ベンダーの動向をどのようにみているか。
大手アプリケーションベンダーの競争の舞台はデータレベルになった。5つの原則で言えば、「コネクテッドデータ」で差別化を図ろうとしている。SalesforceがData Cloud、ServiceNowがWorkflow Data Fabric、SAPがBusiness Data Cloudを提供するようになったのは、彼ら自身の変革の意思の現れとも言える。データはAIの原動力となるため特に重要だ。ストレージ、パフォーマンス、スケールではなく、セマンティックグラフでの差別化、つまりビジネスの意味を理解できるかに競争の焦点がシフトしたと思う。Salesforceは顧客中心、ServiceNowはIT資産中心、Workdayは従業員中心と、着眼点はそれぞれ違うが、企業はこれらのベンダーの製品戦略が、自社のデータ活用にどう影響するかを真剣に考えなくてはならなくなってきた。
──今の話に出てきたベンダーはエコシステム構築に熱心に取り組んでいる印象がある。そのようなベンダーばかりではない中、アプリケーション調達ではエコシステムの視点はどの程度重要になるのか。
クライアントへは、図2のレベル1とレベル2はあくまでも基本的なレベルに過ぎないと説明している。テクノロジースタックを戦略的な基盤として活用するのであれば、レベル3やレベル4の製品を検討する必要があるだろう。これからのAIエージェントの活用でもこの視点は重要になる。AnthropicのClaude、OpenAIのChatGPT、GoogleのGeminiは、それぞれが壁に囲まれた存在だった。ところが、AnthropicがMCP(Model Context Protocol)プロトコルを発表し、状況が変わった。GoogleのA2A(Agent to Agent)プロトコルと合わせ、アプリケーションベンダーが標準プロトコルを選択するようになれば、より広範なビジネス機能の拡張が可能になる。相互運用性の確立で、一気にレベル4のコンポーザビリティを実現できる。Microsoftからも、Natural Language Web(NLWeb)プロトコルの提供開始が発表になった。これはWebサイトのコンテンツやWebアプリケーションを、自然言語でより容易に発見できるようにするもの。オープンな標準として提供することで、Googleがかつて検索アルゴリズムで築いた優位性を、AIエージェントや基盤モデルでは阻止する狙いがあるのだろう。

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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