年間4万7000件の契約業務、1件あたり50分圧縮 「もう戻れない」効果と今後の展望
前述したデジタル化において、ハウスメイトは「ITANDI 賃貸仲介」「ITANDI 賃貸管理」(西日本エリアでは他社ツール)を活用している。同ツールは、不動産賃貸・売買にかかわるSaaSを提供するイタンジによるものだ。複数社のツールを比較検討する中、イタンジを採用した理由について梅津氏は、「未来を見せてくれた点が大きいです。『これはできます』『あれもできます』という機能説明に終始する企業も多い中、『このように取り組むことで、こうした数字が出てきてデータ分析につなげられます』と、新たな業務の姿を見せてくれました」と話す。
実際の導入効果は数字にも表れており、反響対応から物件の案内、申し込み、契約データの入力といった工程において、従来は1件あたり約165分かかっていたところ115分にまで短縮。50分(30%)の業務圧縮を実現している。なお、電子契約までを含むと約95分(36%)の業務圧縮効果が生まれているという。
この効果について梅津氏は、「年間4万7000件程度の管理物件での契約があるため、数字以上に大きな効果を感じています」と説明した。もちろん、導入時には反発の声はあったものの、今では「もう戻れない」といった状況まで浸透したという。
最初の導入から4年が経過した現在、両社の関係は継続している。「2021年にツールを導入していますが、製品機能は日々アップデートされているため、お互いに『もっと改善できるよね』という、上昇志向に変わっています」と評価する。
不動産業界におけるデジタル化は、比較的遅れていると評されることも多いが、梅津氏は「言い換えれば、伸びしろしかありません」と語る。
「まだまだ紙が多い世界で、デジタルデータをわざわざ紙に出力することもあります。だからこそ部分的なデジタル化ではなく、業務を一気通貫でスマートにしていくことが重要であり、理想ですね」(梅津氏)
自社の中でツールを統一した先には、グループ会社とのデータ連携などの課題も解消しなければならない。だからこそ梅津氏は、「グループ全体で使わされているではなく、使いたくなる仕組みを構築していきます」と語る。
「残念なことに、とある調査によると、不動産業界の人気が薄れてきているようです。誰もが『やりたい』『やってみたい』と思える業界に変えていくことが理想です。今、若手に向けた研修も実施しており、私自身も次の世代につなげていきたいと思っています」(梅津氏)

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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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