本格化したレッドハット社のクラウド戦略
前年度比15%増となる7億5000万ドルの年間収益を上げたレッドハットは、今年度から本格的にクラウド事業に乗り出す。今年の3月20日には、米国レッドハットがクラウド事業本部を開設。昨年までLinux部門を率いていたクレンショウ氏をトップに据えた。
米国でのクラウド事業本部の設立を受け、4月1日には日本でも20名体制のクラウド・仮想化事業本部を整えた。「レッドハットは仮想化の最新のソリューションで、拡大するクラウド・マーケットに旋風を起こしていく」と日本法人 代表取締役社長の廣川裕司氏は意気込みを見せる。
レッドハット社では、「効果的なクラウドのインフラを作るためにはテクノロジーはもちろん、ビジネスプロセスも同じくらいに必要になる」(クレンショウ氏)という理念の下、クラウド環境を構築するための一連のベスト・プラクティスを用意している。適切な手法に則ってクラウドのさまざまな機能を取り入れることで安全にインフラを進化させる狙いだ。
ステップ1:社内リソースの仮想化
最初のステップは「仮想化」だ。企業システムのインフラを全体にわたって仮想化する。ある程度統合が進むと多くのユーザーは仮想マシンの管理に負担を感じるようになるため、時期を見てプロセスの自動化も推奨していく。ここには、ソフトウェアのアプライアンスやアプリケーションのライフサイクル管理、仮想マシンのセルフ・サービスでの管理なども含まれる。
ステップ2:プライベート・クラウドの構築
自動化を進める過程で、次のステップである「プライベート・クラウド」にも進むことも可能だ。OS、アプリケーション・イメージの自動作成・展開したり、管理・連携させるなどプライベート・クラウドに必要な機能を実現するためのツール群も用意。いずれの製品も、VMwareやHyper-Vなど他の仮想化ソフトウェアで作成された仮想マシンに対応している。
ステップ3:パブリック・クラウドの追加
レッドハットのテクノロジーに基づいてプライベート・クラウドを構築すると、効率的な「パブリック・クラウド」の活用が可能になる。これが、最後のステップだ。レッドハットは、自身でパブリック・クラウドを提供することはしないが、所定の審査に合格したクラウド・プロバイダーを認定する制度を設立している。
AmazonやIBMといった同社認定のクラウド・プロバイダーはレッドハットのアーキテクチャを採用しており、プライベート・クラウド環境とのシームレスな連携が可能になる。例えば、あらかじめ一定の設定をしておけば、自社のリソースが不足した場合に、自動的にアマゾンにリソースを取得させることも可能だ。
「レッドハットのテクノロジーはオープン、かつボーダーがない。顧客は必要な時に最適なキャパシティを手に入れることができる。それは、自社のファイアー・ウォールの内側かもしれないし、サード・パーティのクラウド環境から調達するかもしれない。数分単位で刻々と変わるニーズに合わせて、最適な場所でアプリケーションを稼働できる」(クレンショウ氏)。(→レッドハットのクラウド技術の強みとは?)