SAPジャパンは、エージェンティックワークフローを活用し、企業がサプライチェーン全体を予測・最適化できる新ソリューション群を発表した。
これには、サプライチェーン全体を横断的に可視化・最適化する新製品「SAP Supply Chain Orchestration」や、計画・物流・調達を高度に連携させるAI機能の強化などが含まれるとのこと。企業がプロセスの再設計にあたって直面する、長期的な混乱やコスト増大、収益機会の損失といったリスク課題に対応するとしている。
SAP Supply Chain Orchestrationの発表
AIを中核に据えた新ソリューション「SAP Supply Chain Orchestration」を発表。このソリューションは、サプライチェーン上の潜在的なリスクを早期に検知し、企業固有のネットワーク構造に応じて影響を分析して、最適な対応をAIとエージェンティックワークフローにより自動的に提案・実行するものだという。これにより、計画、物流、調達、生産といった各プロセスをまたいで、統合的かつ迅速な意思決定を実現するとのことだ。
同ソリューションはSAP Business Technology Platform(SAP BTP)上に構築され、SAP Business NetworkやSAP Business Data Cloudと連携することで、サプライチェーン全体にわたる可視性を確保するという。これにより、一次から下位の取引先までを含む複数階層のデータを統合的に分析し、外部・内部のリスクシグナルを優先度の高いアクションへと変換。複雑化する取引環境の中でも企業が持続的に成長できるよう、業務効率化や法令遵守、顧客満足度向上を支援するとしている。また今後は、SAPの生成AIアシスタントであるJoule(ジュール)との連携も予定されており、サプライヤーコンプライアンスの管理や顧客対応の最適化、収益リスクの低減を支援すると述べている。
2026年上半期の提供開始を予定しているという。
SAP Integrated Business Planningの進化
サプライチェーン計画のスピードと精度を高めるため、「SAP Integrated Business Planning(SAP IBP)」の新機能を発表した。新しいSAP IBPは、インテリジェントオートメーション、統合データモデル、そしてAIによる高精度な予測機能を組み合わせることで、より迅速で柔軟な計画立案と意思決定を実現するとのことだ。
新たに統合されたプランニング領域では、時系列および受注オーダーベースの両方の計画に対応し、長期的な需給計画から短期的な実行計画までをシームレスに連携できるとしている。
これにより、経営全体を通じて一貫した計画プロセスが可能となり、サプライチェーン全体の整合性を高めるとのこと。また、新しいシナリオシミュレーション機能では、アラートやリスクの影響を可視化し、サプライチェーン全体における影響度を把握できるという。加えて、AIによる在庫最適化や特性ベースの計画を活用することで、ファッション小売、ハイテク、ライフサイエンス、消費財など、業界ごとの需給バランスを的確に管理し、在庫と生産能力の最適化を支援すると述べている。
プランナー向けの新インターフェース「Configurable Planner Workspace」では、AIアシスタントのJouleが予測や在庫分析をもとに、状況に応じた提案や意思決定支援を行うという。これにより、担当者はデータ収集や分析に費やす時間を削減し、重要な判断に集中できるようになるとのことだ。
AI機能は現在ベータ段階で、2026年第2四半期に一般提供を予定しているという。
SAP Logistics Managementの発表
新ソリューション「SAP Logistics Management」を発表した。同ソリューションは、これまでSAP Extend Warehouse Managementで提供していた大規模物流拠点の業務を補完するもので、中小規模の地域・ローカル拠点の物流業務と統合的に管理することで、多層型の流通ネットワーク構築を支援するとのことだ。
SAP Cloud ERP およびSAP Business Network for Logisticsと連携し、在庫・出荷・パートナー情報を一元管理できるという。AIによる意思決定支援を通じて、エンドツーエンドの物流業務のサイロ化を解消し、荷主、3PL、配送業者など物流業務を支えるエコシステム全体での協業を促進するとしている。
同ソリューションは、2026年第1四半期に提供開始予定だという。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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