電子出版デバイスの波は、実は3度目
「このところ電子出版関連で講演する機会がものすごく増えた」と語るのは、日本電子出版協会(JEPA)副会長の下川和男氏。講演依頼のほとんどがEPUB(オープンな電子書籍ファイルフォーマット規格)についての解説で、このセミナーの前々日にも1日に3回も説明したという。こういったこぼれ話からも、いままさに電子書籍が大いに注目を集めていることがわかる。
下川氏によると、電子出版デバイスが盛り上がりを見せたのは今回で3度目だという。
最初の動きは1998年から始まり、米国で読書端末を発売するベンチャーが次々と登場した。主なものではRocket eBookやSoftBookなどがあったが、それらを買収したGemStar eBookがほかの事業(Gコードやテレビガイド情報誌)を目当てにニューズ・コーポレーションに買われた2003年で、すべてが終わったという。
当時はインターネット勃興期で、550年の印刷の歴史もすぐにインターネットが変えてしまうだろうという少し思い上がった考えもあったが、やはり甘かったとまとめた。当日は下川氏私物のRocket eBookの現物も展示されたが、動かないながら下川氏は「私の宝です」と語っていた。
PC用のebookリーダーとしては、2000年前後にマイクロソフトとアドビがそれぞれ「Microsoft Reader」と「Adobe eBook Reader」を発表した。これらも特に成功したプロジェクトではないが、2万タイトル以上のPDF書籍とともに、ホワイトペーパーやマニュアル、調査報告といったドキュメント類も販売されていた点が注目される。これは、キンドルの「Kindle DTP(Digital Text Platform)」でも同じことが起こるだろうと予測した。