SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Security Online Day 2026 Spring

2026年3月 オンライン開催予定

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2025年夏号(EnterpriseZine Press 2025 Summer)特集「“老舗”の中小企業がDX推進できたワケ──有識者・実践者から学ぶトップリーダーの覚悟」

特集:年末特別インタビュー

【特集】CIO/CDO/CTOの6人に聞く、“岐路の一年”で得た手応えと展望──データ活用は次の段階へ

2025年末特別インタビュー:「ITリーダー」編

 経済産業省が2018年の『DXレポート』で指摘した「2025年の崖」──問題提起から7年が経ち、岐路になる一年を終え、まもなく新年を迎えます。レガシーシステムからの脱却や人材育成に奮闘してきた成果が実を結び、AIの技術進展も相まってさらなる高みが見えた企業もあれば、これからという企業もあるでしょう。変化が激しく、様々な要因が複雑に絡み合う時代だからこそ、企業の変革の先頭に立つリーダーの決意が明暗を分けると言えます。そんな一年をCIO/CDO/CTOといったITリーダーたちはどのように振り返るのでしょうか。EnterpriseZine編集部が実施した、6人のキーパーソンのメールインタビューを紹介します。

6名の方にコメントをいただきました(氏名・五十音順)
和泉憲明氏(株式会社AIST Solutions Vice CTO)、金澤光洋氏(株式会社みずほフィナンシャルグループ 取締役 兼 執行役常務 グループCIO)、高山百合子氏(株式会社マキタ 執行役員 情報企画部 部長)、中林紀彦氏(ライオン株式会社 執行役員 全社デジタル戦略担当)、古田昌代氏(マルハニチロ株式会社 執行役員)、ルゾンカ典子氏(コスモエネルギーホールディングス株式会社 常務執行役員 CDO)

デジタル変革100年史の転換点──2026年、「デジタル時代の長篠の戦い」が始まる(AIST Solutions 和泉憲明氏)

 第一次産業革命以降、社会構造の変革は、技術の登場から社会定着まで、およそ100年の周期で完了してきました。この視座に立てば、1950年代のコンピューター登場から2050年頃まで続く一連の流れは、紙中心経済の電子化を起点とする構造転換、すなわち「デジタル変革期」と捉えるべきものです。

 その前半は、紙と人手に依存してきた業務を徹底的に電子化する段階でした。そして迎えた2025年、変革の第3四半期の終盤において、私たちは官民一体となって「2025年の崖」問題に取り組みました。昭和100年という節目の年に顕在化したこの課題は、単なるシステムの老朽化ではありません。旧来の組織構造や商習慣を温存したまま、新しいデジタル技術を接ぎ木し続けた結果、構造的な歪みが限界に達し、「摩擦熱」として噴出した現象だったと総括できます。

 2026年は、この摩擦を乗り越え、デジタルが社会インフラとして定着する「第4四半期」、すなわち「デジタル完結期」へと踏み出す始点となります。ここで勝敗を分かつのが、AI活用による「構造の再設計」です。

 私は、これから本格化する「AI戦国時代」を象徴する出来事を、「デジタル時代の長篠の戦い」になぞらえています。かつて最強を誇った武田騎馬隊は、個人の武勇と攻撃力が密結合した旧来構造のまま、鉄砲をあくまで補助的な武器として用いました。一方、織田信長は、鉄砲という技術を前提に、個人の技能に依存しない部隊編成や補給体制を整え、戦いの構造そのものをデカップリング(分離)し、システムとして再構築することで天下統一への道を切り開きました。

 AIも同様です。既存業務の効率化にAIを使うだけの「武田型」企業は、やがて競争力を失いかねません。これに対し、AIを前提にビジネスモデルや組織をデカップリングし、戦略の中核に据える「織田型」企業こそが、この第4四半期の覇者となるでしょう。2026年、AIは「使うか否か」を問う道具ではなく、「どう戦い、どう共創するか」という経営構造そのものを問う踏み絵となるのです。

株式会社AIST Solutions
Vice CTO

和泉憲明氏
平成8年12月 静岡大学情報学部 助手、平成14年4月 産業技術総合研究所(産総研)・研究員、上級主任研究員などを経て平成29年8月 経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 企画官、令和2年7月 商務情報政策局 情報経済課 アーキテクチャ戦略企画室長、令和6年7月より現職。博士(工学)(慶應義塾大学)。現在、デジタル庁・シニアエキスパートを兼務。
関連記事:なぜ日本のDXは社会実装に辿り着かないのか?和泉憲明氏が産官視点で示すITインフラ刷新の『真の意義』

ビジネスとITが一体になって「データの民主化」を進展(みずほフィナンシャルグループ 金澤光洋氏)

 2025年のデータ活用を振り返ると、当社では「データがビジネス競争力を左右する」時代に本格的に突入したことを強く実感しています。ビジネスとITが一体となり、データを軸にした意思決定や業務プロセスの見直しが着実に進展しました。また、AIや機械学習を活用したデータ分析により、業務の標準化・自動化や不正検知、個別ニーズに合わせたサービス提案など、データの価値を最大限に引き出す取り組みが広がっています。

 2025年は、データの民主化と現場活用の拡大も大きな成果でした。専門部署だけでなく、現場の行員や事業部門が自らデータを活用し、業務改善や新たな顧客価値創出につなげる動きが加速しています。これにより、データを活用したリソースシフトや業務効率化、投資効果の見える化も進み、限られた資源で最大の成果を生み出す体制が整いつつあります。

 一方で、データガバナンスやセキュリティの高度化も重要なテーマです。サイバーリスクの拡大やグローバルでのIT投資増加を背景に、データの安全性・信頼性を確保しつつ、データ活用の幅を広げるための施策に取り組んできました。障害対応やリスク管理の高度化を通じて、安定稼働と変革の両立を実現しています。

 2026年に向けては、データ活用をさらに進化させるため、AIや自動化技術を軸とした業務改革を加速します。ビジネスとITが垣根を越えてさらに一体化を進め、データドリブンなビジネス戦略を実行しながら、ビジネスのアジリティを高めることで、競争優位性を実現します。

 今後も環境変化に応じた変革を果敢に実行し、お客さまの期待を大きく越えるビジネスの創出に取り組むことで、社会全体の発展への貢献と持続可能な未来の実現に向けて、挑戦を続けてまいります。

株式会社みずほフィナンシャルグループ
取締役 兼 執行役常務 グループCIO

金澤光洋氏
東京大学法学部卒業後、スタンフォード大学経営大学院修士課程を修了。みずほ銀行・みずほフィナンシャルグループにて経営企画、国際業務、リスク統括など要職を歴任。2024年よりグループCIOおよびみずほリサーチ&テクノロジーズ取締役、2025年4月よりみずほフィナンシャルグループ取締役兼執行役常務(現職)。

「地方中小」であっても大手企業並みの柔軟性が必要に(マキタ 高山百合子氏)

 2025年、造船業界は従来の環境規制対応に加え、製品検査における情報セキュリティ項目への対応や企業間データ授受など、IT環境への適応力を問われる1年でした。

 社内ではAIが欠かせない存在となり、経営ダッシュボードの稼働により「整ったデータは価値を生む」という認識が根付き始めました。事業部門の戦略や課題解決手段にITがより強く意識されるようになったのも大きな進展です。セキュリティ分野でも様々な強化を行いました。特に事業部門と共に行ったサプライチェーンセキュリティ活動では、各方面からの反応に手応えを感じています。社外では地域や他社との交流企画を複数回開催し、前年以上の縦横の関係が形成されました。新たな課題発見や、視野の広がりを実感しています。また、登壇や事例紹介の機会に恵まれ、多くの学びと出会いをいただきました。自社の挑戦やメンバーの活躍を発信できたことは大きな喜びです。

 2026年は社会情勢や国の業界施策にAIの進化が重なり、自社は更なる荒波に直面することでしょう。地方中小製造業であっても、大手と同様かそれ以上の柔軟な組織対応力が不可欠です。

 この1年の経験から、自社社員の視点は「データをどう使うか」から「使えるデータをどう準備するか」へシフトし始めています。また、ローコードツールとAI活用によって社内の市民開発が加速しています。情報システム部門はこの流れを妨げることなく、全体舵取りと保護を担います。中長期視点でのデータ基盤整備を進め、AIも対話型だけでなく内製アプリへの組込を進めることで、誰もが技術の恩恵を享受できる環境を目指します。

 サプライチェーンとともにDX・セキュリティを推進し、「地方中小の非IT企業でもここまでできる」を実践しつつ地域・業界と共に歩む。お客様や取引先様への価値提供と、従業員が安心して働ける環境づくりを両立させるため「動き回る情シス部門」として挑戦を続けます。

株式会社マキタ
執行役員 情報企画部 部長
高山百合子氏

農学部卒。数社での一般事務を経て、2005年マキタへ入社。設計部で一般事務をこなす中、IT担当者の必要性を感じ、2011年トップへの(ほぼ)直訴の形で一人目情シス(総務兼務)となる。2018年、組織に情報システム部門が誕生し管理職に。2021年情報企画部長、2023年執行役員に就任。役員兼部門長として社内のIT全体を統括。四国のIT担当者交流会の企画運営や、業界・企業間の情シス意見交換会を実施するなど、自社の枠を超えて活動中。
関連記事:『中小だから……』は言い訳 超アナログな地方中堅企業を2年半で変貌させ、四国のITをリードする存在に

次のページ
全社のデータ集約基盤を構築、“先に仕掛ける”経営へシフト(ライオン 中林紀彦氏)

この記事は参考になりましたか?


広告を読み込めませんでした

広告を読み込み中...

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
特集:年末特別インタビュー連載記事一覧

もっと読む

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/23272 2025/12/24 10:00

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング