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「野村HD vs 日本IBM」の裁判から考えるベンダーのシステム完成責任、分割契約の場合はどうなる?

野村ホールディングス/日本アイ・ビー・エム 裁判考察:前編

大切なのは「システム化の目的」の共有と文書化

 無論、野村HD側としては本来、IBMに最後まで責任を持って仕事を完成させてもらう意図だったでしょう。多段階契約にしたのは、前述したようなリスクを考慮したなどの事情があってのことで、実質的には「一本の大きな契約」だと認識していたと思います。

 そしてIBMとしても、当初はその思いは同じだったのではないでしょうか。「都合が悪くなったら途中で放り出してもそこまでのお金はもらえるように……」などと考えてこうした契約をしたとは到底思えません。多段階契約はあくまでリスク回避のための一つのテクニックだったに過ぎず、最後まできちんと仕事を完成させようという意図はIBM側にもあったはずです。

 ただし、そうであるならやはりシステム化の目的と、それに基づいて両者がシステム開発全体で負うべき責任を定めた基本契約書なり、それに準ずる文書を作成し、これを各個別契約の上位に位置づける必要があったのではないでしょうか。そうしておけば、この目的達成に資するシステムの完成自体がベンダーの債務となり、それに必要な協力を行うことが発注者の債務となります。過去の判例を見ても、こうすることが両社の債務を確定する重要な鍵となります。

 残念ながら、今回の開発ではそのあたりが明確に定義されていなかったようです。野村HDとIBMという、システム開発には手慣れているはずの両社で行われた開発において、何故こうした事案が起きてしまったのか……。現場にいたわけではない私にはわかりませんが、逆にいえば、これほどの企業でも起こってしまう問題だということです。であれば、日本中のどの企業でも発生し得るのではないでしょうか。

 「システム化の目的」というと、契約書や要件定義書の冒頭に枕詞のように書かれる“お飾り”のようにも捉えられがちですが、実はベンダーの責任(債務)を定義するうえで非常に大切な文言であることを、私自身も再認識させられる判例でした。

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント
経済産業省デジタル統括アドバイザー兼最高情報セキュリティアドバイザ
元東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員
筑波大学大学院修了(法学修士)日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステム...

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