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主力事業が逆転したベルーナ……データに基づく顧客理解で通販事業の“再起”に向けた業務改革に挑む

「AI Innovation Day Tokyo 2025 Winter」講演レポート

200種類以上のカタログ送付を適正化 独自ヒアリングで補完も

 ベルーナが業務改革の一環で実施した施策には、様々なものがある。浅沼氏は、冒頭で述べた顧客データ資産を活用した施策を複数紹介した。その1つがカタログ送付パターンの最適化だ。ベルーナのカタログ通販では、200種類以上のカタログやチラシを発行しており、この中から顧客の趣味嗜好を反映した顧客セグメントを運用している。その規模は100万通、10万通りに上る。カタログが送られてくるのを楽しみにしている顧客がいる一方、オンラインでの購入が中心でカタログは不要と考えている顧客もいるだろう。その見極めを行うために実施したのが、次のような手順での顧客データ分析であった。

 まず、オンラインでの行動と購買の関連を分析し、行動指標をもとに顧客を評価・分類した。次に、カタログ送付前後の行動を比較してカタログへの依存度を評価し、その結果に応じて顧客ごとにカタログの扱い(種類や送付の可否)を見直した。これによりカタログにかかるコストの最適化を図ったという。

 それでも、浅沼氏は「データ分析だけではわからないこともある」と指摘。以前、コンサルティング会社に依頼し、優良顧客と購買行動の関係分析を実施した経験があるが、可視化まではできたが、非常に複雑で消化不良な成果物が残ったという。その反省から独自で実施したのが、顧客へのヒアリングである。このヒアリングは、定量的なデータ分析を否定するものではない。自分たちで仮説を立てた上で、データ分析だけではわからない「満足要因」「思考や感情」「購入文脈」を探るために行うものになる。

 顧客ヒアリングの結果、多くのアクションにつながるインサイトを得た。たとえば、サイズ展開が豊富であることが商品満足度の高評価につながっているとわかると、サイズを理由とする交換を無料に変更し、商品の良さを実感してもらうことにした。また、複数カテゴリーの商品を購入している背景には、家族の商品を代わりに購入していることもわかった。そこで、テレビ通販のセリフを購入者から実際に使用する人に変更し、購入に向けての心理的ハードルを下げる工夫をした。

すべては顧客のために AIと協働しつつも“手厚い支援”を実現へ

 浅沼氏は、今後に向けてのAI活用への意欲も示した。AI導入に適しているのは、人員が少なく、ギリギリの人数で回している部署と想定し、そのメンバーからの協力を得てボトムアップで適用範囲を拡大させるビジョンを描く。まず、ステップ1が便利ツールとしての利用、次のステップ2でアシスタントとしての利用、最後のステップ3で一個人(パートナー)としての利用と進めていく計画だ。

 具体的に検討している領域の1つにコンタクトセンターがある。ベルーナでは顧客からの電話はすべて受ける方針で人員を配置している。この配置はピーク時に合わせており、足りないときは他部署からの応援を得ることもあるという。閑散期の稼働率が低下するが、一部をAIに置き換えられれば、すべての電話を受ける方針を維持したまま、人員配置の最適化を実現できる。また、年配者や方言での対応を好む人たち、注文のついでにファッション相談をしたい人たちのように、人間が対応することをベルーナの価値と感じている顧客には、より手厚い電話対応も可能になるだろう。

 この考え方はシステム運用にも応用できる。浅沼氏は、「昔は手当がもらえるので夜勤の希望者がいたが、今はもうそんな時代ではない。若手が辞めてしまう。現在は22時から翌朝までかかる夜間処理があるが、AIにリソースの最適化を実行させ、1時間で終わらせることができれば、23時以降の障害リスクがなくなり、夜勤を不要にできる。これを実現させたい」と話した。

 さらに、商品企画でのAI活用も視野に入れる。顧客理解を拡張し、潜在ニーズや顕在ニーズを発見できないか。浅沼氏は「専門エージェントを使い、商品案を出してもらうことをやってみたい。また、消費者エージェントを使い、出てきた案を競争させる。最適化に挑戦することにも取り組んでいきたい」と語る。人手不足の悩みを解決したい思いは強いが、それでも「私たちがどうしたいかではなく、お客様がどうしてほしいか。お客様主体を徹底したい」と、浅沼氏はベルーナのAI戦略の方向性を訴えた。

画像を説明するテキストなくても可

図2:商品企画でのAIエージェント活用イメージ

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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