SaaS市場の拡大とともに成長を遂げてきたラクス。その舞台裏には、コストと安定性を両立させる独自のインフラ戦略、そして技術力だけではない「人間力」を重視した組織づくりがあった。同社 インフラ開発部 副部長の永易健史氏に、15以上のサービスを支える組織体制の在り方、そしてインフラエンジニアに求められる資質について聞いた。
組織拡大と「クラウドネイティブオンプレミス」への技術的変遷
2000年の設立以来、ラクスは「楽楽精算」をはじめとする多数のクラウドサービスを展開し、日本のSaaS業界をけん引してきた。現在、同社が提供するサービス数は約15に及び、それらを支えるインフラ基盤の重要性は年々増している。
当初、ラクスではサービスごとに専任のインフラエンジニアを置かず、チームとして複数の商材を横断的に運用する体制だった。しかし、事業の急激な成長とともにその体制は大きく変化していく。インフラ開発部 副部長を務める永易健史氏は、「楽楽精算のユーザーが1万人を超え、売上が伸びる中で運用に求められるレベルも高くなっていきました。そのため、1つのサービスごとに2〜3名の担当者を設ける体制が必要だと判断し、2010年代後半から人を増やしていきました」と振り返る。
現在、インフラ開発部は東京と大阪をあわせて約40名にまで拡大した。なお、大阪発祥の企業であるため、初期からある「楽楽自動応答(旧メールディーラー)」などは大阪、東京に移ってから拡大した「楽楽精算」などは東京で運用されている。
また、ラクスのインフラとして特徴的なのは「クラウドネイティブオンプレミス」という独自の戦略だ。世の中がクラウドファーストへと舵を切る中、オンプレミスを中心とした運用を続けている。
もちろん、これは単に「古い物理サーバーを使いつづける」という意味ではない。サーバー台数と作業量の増加にともない、手動作業によるミスを防ぐためIaC(Infrastructure as Code)やCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の導入を推進することで、オンプレミス環境にクラウドネイティブな技術スタックを取り入れ、高い安定性と柔軟性を両立させている。
「スピードが求められる事業にはクラウドを使いつつも、基本はオンプレミス。しかし、オンプレミスでは自動化の恩恵を受けられないことが課題でした。そこで、Kubernetesなどのコンテナ技術やオブザーバビリティの学習を推進し、オンプレミスでもクラウドネイティブの恩恵を享受できる環境を構築しています」(永易氏)
その一方、難しいのは「人」だ。インフラの高度化とあわせて、いかにチームを強化できるか。ラクスのインフラチームも試行錯誤をつづけている。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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