利用率ほぼ100%──LINEヤフーの「AI義務化」を推進したリーダーに宿る“ギャルマインド”の精神
#11:LINEヤフー AI CBU AI推進ディビジョン 越川滋代さん
DX・AXにも通ずる「ギャルマインド」の威力
──越川さんのパワーの源は、「ギャルマインド」だと思うんですよね。
自分の軸は何だろうと考えると、「こうありたい」という圧倒的な信念と突破力かなと思うんです。そもそもギャルって、「ギャル」と名が付くより先に概念自体は存在していたんですよ。「私たちはこうありたい!」という少女たちが渋谷に集まって、それが「ギャル」と呼ばれるようになった。内側からの衝動が、結果的に外見に現れただけなんです。
仕事も同じ。私、タスクに落とし込むということをあまりしないんです。「何をするか」より「どうありたいか」。ありたい姿が決まっていれば「だったら、あれもこれもやるよね」とアイデアが無限に生まれてくるので、あとはその中からチョイスして決めるだけ。
このやり方だと、失敗してもヘコまないんです。タスクは失敗したけど、「こうありたい」という根幹は無傷だから、「じゃあ、他の方法があるんじゃね?」って。怒られたら「やべー」とは言いますよ。でも、本当にやべーとは思ってません(笑)。次にトライすることが山ほどありますから、引きずってる時間が極端に短いんです。
──(拳を掲げて)「失敗を恐れず、踏み出そう」みたいなことですか?
そんな堅苦しい話じゃないんです。人間だから、もちろん失敗は怖い。ただ「失敗が怖い自分なんだなぁ」と俯瞰で見ながら、それでも「他にもアプローチあるでしょ?」と、ありたい姿に近づく方法を試し続ける。それだけなんです。
──ギャルとは無縁の人生でも、「ギャルマインド」は取り入れられますか?
もちろんです。「こうありたい」という理想像は、何だっていいんですから。「DXをやっている木村拓哉になりたい」でもいい。キムタクがDXを仕掛けるならどう振る舞うだろうと考えれば、やることは次々と降ってくるはずです。じゃあ、とりあえずまずデニムを履いてみよう。履いてみたけど何も変わらなかった……それでいいんです。アイデアが一つ失敗しただけで、アプローチは他にもたくさんありますから。
──越川さんは今、どうありたいんですか?
楽しみたいし、楽しませたい。面白がりたいし、面白がってほしい。そういう空気を自分から発信できる人でありたいですね。AI推進の仕事は、まず話を聞いてもらえないと始まりません。興味を持ってもらいたい。外見へのツッコミでも、雑談でも、入り口は何でもいい。話してみたら難しいことも少し身近に感じられて、向き合った人が「わたしでもいけそう」って元気になって帰っていく。そういう存在でありたいですね。
AIの時代だからこそ、人を置いていかない明るさが必要だと思っています。難しい変化を、難しい顔だけで進めない。面白がる力で、人と組織を前に進めていきたいです。
LINEヤフーはグローバル企業ですから、ゆくゆくは、このマインドを「海外バージョンの越川」にアップデートして、国境を越えてAIを面白がってもらえるような旗振り役になりたいです。
──私も今日、越川さんからめっちゃ元気をもらいました。
AI文脈でいえば、私たちは今全員がスタートラインに立っています。インターネット創世記に匹敵する時代の波にぶち当たれた。これって、すごく幸せなことなんです。AIに仕事を奪われると捉えるか、チャンスと捉えるかで、この先の人生設計は大きく変わります。
先人たちがアップデートし続けて、こんなに便利な社会を作ってくれました。今度は私たちの番。未来のために何ができるのか。その視点さえあれば、この波をきっと楽しめるはずです。
取材後記:人をひき付けるギャルがもつ「何か」
茶髪にミニスカート、ルーズソックス。1990年代半ば、SHIBUYA109やセンター街を堂々と闊歩するコギャルたちの中に、越川さんはいた。
福島から上京して初めてギャルを目にしたとき、筆者は好きな芸能人に出くわしたみたいにテンションが上がった。そう、筆者はギャルに憧れていたのだ。いや、嫉妬していたのかもしれない。自分をまっすぐに貫ける強さ。どんな相手でもすっと懐に入っていく人懐っこさ。すべてが眩しかった。そもそも上京したのだって、受験雑誌の表紙を飾ったギャル系のお姉さんに一目惚れしたからだ。ギャルには、人をひきつける何かがある。
その「何か」の正体を、越川さんに見た。「こうありたい」という圧倒的な信念。そこから生まれる、底なしの明るさと突破力。失敗しても「やべー」と切り替える。そのしなやかさは、正解のないAI推進と驚くほど相性がいい。ひょっとして、世の中のDXはちょっと真面目すぎか。心にギャルを宿すのに、遅すぎることはない。
短大時代のギャル仲間とともに写る越川さん(前列右)
(※ご本人にご持参いただいた写真を編集部にて一部加工しています)
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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