RHELはそのまま、サポートだけSUSEへ──みずほ銀行が移行ゼロで断ち切った、レガシー運用のベンダーロックイン
「SUSECON 2026」 みずほ銀行インタビュー
みずほ銀行が、老朽化した基幹系RHELサーバーの更改・移行をせずに、運用コストやリスクを最小化する「SUSE Multi-Linux Support」を採用。ベンダーロックインから脱却し、セキュリティと継続性を両立した挑戦の舞台裏と、その決断に至った経緯を、プラハで開催されたSUSEイベントで、現場の担当者に聞いた。
大規模金融機関のオンプレミス基盤には、クラウドへの移行が進む一方で容易には手をつけられないレガシーシステムが残り続ける。みずほ銀行も例外ではない。勘定系以外のオンプレミス基盤では、20システム・200台以上のRHEL(Red Hat Enterprise Linux)サーバーのサポート終了が迫り、OS更改か延命かの判断を迫られていた。通常であれば最新バージョンへの更改が王道だが、関連システムの雪だるま式な移行コストと、限られたITリソースの消費は、前向きな投資を食いつぶしかねない規模に膨らんでいた。
そこでみずほ銀行が検討の俎上に乗せたのが、SUSE MLS(Multi-Linux Support)だ。MLSはRHEL環境をそのまま維持しながら、セキュリティパッチの提供とサポートだけをSUSEに切り替えるサービスで、旧称「SUSE Liberty Linux」を前身に2022年頃から本格展開が始まった。Red HatによるCentOS廃止とRHELソースコードの非公開化(2023年)を背景に、ベンダーロックイン脱却を求める企業への現実解といえるものだ。
みずほ銀行はこうしたMLSの取り組みにより、SUSE Customer Award 2026の「Open Source Excellence」部門を受賞した。
SUSEが発表したプレスリリース(英語版)には、みずほ銀行 プラットフォームエンジニアリング部 ディレクター 森圭司氏のコメントとして「サイバー脅威が急速に進化する中、一刻の猶予もない。ミッションクリティカルなレガシーインフラの移行は複雑な課題であり、SUSE Multi-Linux Supportによって即時移行のリスクなしに環境を保護することができた」とある。
チェコ・プラハで開催されたSUSECON Prague 2026の会場で、森圭司氏と同社ヴァイスプレジデントの佐々倉共世氏に話を聞いた。
「更改か、放置か」──RHELサポート終了が突きつけた、出口なき選択
──今回のSUSE Customer Award受賞、おめでとうございます。まず、MLSの導入に至った背景から教えてください。
森 私どものチームはプライベートクラウド、具体的にはオンプレミス上で仮想マシンとして稼働するサーバー群を担当しています。その中のRHELが、複数のバージョンにわたってサポート終了を迎えようとしていました。対象はだいたい20システム程度です。
これまでは保守サポートをトラブル対応の手段として使ってきたのですが、サイバー攻撃が増加する中、脆弱性を放置できない状況になってきました。そこでOS更改の議論を始めたのですが、対象システム単体では済まず、関連システムや上位のソフトウェアなど、移行対象が雪だるま式に膨らんでしまいました。コストも期間も、非常に大きくなることが見えていました。
──規模感として、どの程度の投資が必要になる試算でしたか。
森 具体的な金額を断言するのは難しいのですが、1システムあたりのバージョンアップに数億円かかるものもあれば、それを大幅に超えるものもあります。20システムを順次対応していくとなると、コストと期間の両面で現実的ではないという判断になりました。
──Red Hatへの延長サポートの交渉はされなかったのでしょうか。
森 交渉はしました。ただ、延長サポートといっても既知のトラブルへのナレッジ提供にとどまり、新たなセキュリティパッチは提供できないという回答でした。サイバー攻撃への対応という観点では、それでは不十分で、行き詰まっていたというのが正直なところです。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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