ソニー 経理部長が明かす、継続的に価値を生み出せる経理組織の条件──「集約型」組織で進める人材育成術
経理は「正確性+α」が求められる時代に ソニーが実践する、若手が辞めないための育成方法
「具体と抽象」の反復で優秀な経理を育てる 新人にも積極的にチャレンジの場を
続くテーマは、人材育成だ。林氏は、組織を支える人材に必要な力として、「会計・税務の専門知識」「コミュニケーション力」「論理的思考力・判断力」の3つを挙げる。専門性だけでは足りず、3つが掛け合わさって初めて組織を支える人材になるという。
5つの事業セグメントは、たとえば収益認識基準に関しても会計処理における論点が異なり、高度な知識が必要とされる。そのうえ、現場にガバナンスを効かせる伝え方や海外赴任できるだけの語学力、税務調査で「調査官が聞きたいと思っていることをきちんと汲みとり、それに対して誠意をもって答える」力までが求められる。
ソニーの人材育成の起点は、採用と初期配属にある。新卒採用で合格した学生には大学4年夏ごろに配属前面談を行い、ソニーの経理部門が用意できるチャンスを伝えつつ、本人の描くキャリアと適性をすり合わせる。希望どおりでなくても、理由を後で説明する。かつては人事任せだったこの面談だが、経理組織の中身が見えにくく配属理由がわからないと話す若手も多かったことから、自分たちで行うことにしたそうだ。
配属後は、ジョブローテーションで人材を育てる。20代は入社後10年で3つの職種・部署を経験。想定と違う仕事や、「意外とおもしろい」と感じる領域に早く出会わせることが狙いだ。30代以降は、自らに適した軸でステップアップし、海外赴任やCFOスタッフ、財務・IRへ移る道も与えられる。
その中で林氏が特に重視するのは、「具体と抽象の往復」だ。オペレーションや事業経理(具体)と連結経理や経営管理(抽象)を行き来することで、ビジネスの解像度が上がるという。経理・財務・管理・監査委員会補佐と歩んだ林氏自身の経験が、設計の背景にあるとのことだ。
加えて、学びの仕組みもバラエティに富んでいる。学生を対象としたインターン、経理センターのメンバー講師が講師となるDX/AI研修、国内および海外拠点間の交換留学、自主的な勉強会などで、実務理解やネットワークを育てる。「人材の可視化」という狙いもあり、グローバル経理センターの200名以上が毎年経験を入力し、上司との面談を経てDX推進課開発のBIダッシュボードに集約。誰がどんな経験をしているか把握し、戦略的にローテーションを設計する。
経理担当者にさまざまな機会を与えている同社だが、「最終的にいちばん個人の成長に関与できるのは、現場のマネジメント層だ」と林氏は強調する。実務処理において、確実に成果を出すならマネージャー層が業務を刈りとるほうが早いが、それでは若手に経験をさせることができない。
たとえば、経理センターに数多く存在するプロジェクトに参画するメンバーの中には、入社年度が浅い若手社員が含まれていることもある。「この業務なら任せられる」と判断し、打席に立たせるのは、マネジメント層にしかできないことだと林氏は述べた。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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