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『EnterpriseZine Press』

2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

財務・会計Online Press

ソニー 経理部長が明かす、継続的に価値を生み出せる経理組織の条件──「集約型」組織で進める人材育成術

経理は「正確性+α」が求められる時代に ソニーが実践する、若手が辞めないための育成方法

30年間止まらない改善活動は、今や「文化」に そこまで続く理由は

 ソニー経理の改善活動は1993年から一度も途切れず30年以上続き、「文化」として根付いているという。この活動から2000年代に生まれたのが、決算早期化への取り組みだ。同社は単独決算を2営業日、管理会計を3営業日で締め、連結は9営業日前後で各セグメント別のP/Lが出てくる。これは、AIなどテクノロジーの力で実現したものではなく、改善の積み重ねによるものだという。

クリックすると拡大します

 1990年代から2000年代にかけては、関係会社間の債権債務の不一致が月によっては300億円を超え、決算が締まらないこともあった。そこで、請求書の発行タイミングを決め、出荷基準を統一して社内ルールとして整備。近年では電帳法対応に加え、一定の閾値を下回る不一致は翌月修正に回す重要性基準を監査法人と協議して定めた。大量に発生するトランザクションを処理する一環として、BPOも活用している。

 また、業務改善だけでなく「人と組織をつなぐ」活動も行われている。コロナ禍で出社率が10%を切り、「誰がどこで何をしているのか」が見えづらくなった。そこで、若手メンバーの声から「自己紹介リレー」なるものが立ち上がった。経理センターの全メンバーのうち、約8割まで自己紹介が進んでいる。プライベートの情報も含めて互いを知ることが、心理的安全性の高い組織づくりにつながっているという。

 なぜ、これだけ長く改善活動が続くのか。林氏は、「完璧を求めず小規模で始めたこと」を理由に挙げる。進捗や成果を可視化・共有し、改善活動の貢献を人事評価に組み込むことで、行動変容を促しているとのことだ。

 林氏は、「10年後、自社の経理は機能しているか」という問いを我々に投げかける。ESG開示やDX/AIの進化で環境が急速に変わるなか、答えは1つではない。それでも問い続けること自体が、変革の第一歩になる。

 そして、講演の結びとして同氏は、自身が立ち上げた人材育成タスクフォースの歩みを紹介した。「全マネジメントが人材育成について対話する場の創出」「一人ひとりの育成を全体で考える」ことを目標に掲げ、2020年8月の発足以降、各部の課題共有から若手育成、評価ルールの制定、従業員サーベイに対する施策検討などの活動を重ねてきたという。

 コロナ禍でエンゲージメントが低下し、離職率も上昇する様子を経理センターの外から見ていた林氏は、近い将来、経理センターで人材育成を担当することを見据え、このタスクフォースを立ち上げた。プロジェクトメンバーには、この活動に愛情をもって進められる4人を選んだが、「たった4人で何ができるのか」と問われたことも。その際は、「メンバー内に単なるコメンテーターはいらない。熱い思いをもって進められる人たちで改革を進めたい」と押し切って始めた。経理から離れた立場にいたからこそ、人材育成の課題や重要さが見えたという。その実感を共有したいと述べ、林氏は講演を締めくくった。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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