クラウド・コンピューティングとシステム管理者のこれから
続く基調講演では、クラウド時代に先駆けて、国内でSaaS、PaaSによるビジネスをいち早く開始した経験をもとに、株式会社セールスフォース・ドットコム 代表取締役社長 宇陀栄次氏が「クラウドコンピューティングとシステム管理者のこれから」と題して基調講演を行なった。
まず、宇陀氏はクラウド時代へのイノベーションとしてブロードバンドなどの技術的進歩によるインフラ環境の向上をあげ、加えてコンシューマウェブの拡充による膨大なユーザーを対象にしたシステム技術の向上、携帯電話やスマートフォンの利用拡大、TwitterやYouTubeなどのソーシャルメディアの普及によるPull型からPush型への情報収集の変化などを紹介。
技術面とニーズ面の双方から、日本におけるネットインフラの進化と低コスト化が加速したと解説し、「日本はガラパゴスと揶揄されつつも、その実クラウド環境においては世界をリードしている」と評価した。
しかし、決して「すべてクラウドにすればいいとは限らない」といい、クラウドの利用は目的に応じて行なわれるべきであり、汎用的、一時的、暫定的なものなどが向いていると説明する。しかし、そうした部分的な利用だけでも、システム管理者の負荷は大きく軽減され、自社のコアとなるシステムに注力できると力説した。
続けて宇陀氏は「クラウド・コンピューティングにおいては、億単位のユーザーにブラッシュアップされ汎用化された技術を利用しつつ、効率的に新しい価値を作り出すモノを提供することが必須」と語り、そのアプリケーションや開発プラットフォームとしてSaaS、PaaSのマルチテナントな有用性を説いた。
なおSaaSはASPと似ているが、データをクラウド上に散在させ、ルールに基づいて集めて情報にするというメタデータドリブン技術に支えられている。データに意味を持たせないことで情報のセキュリティを担保しようというものだ。さらにPaaS活用の一例として、エコポイント申請システム開発のデモが行なわれ、Twitterに似たユニークな時系列型の開発画面が紹介された。
最後に宇陀氏は、こうしたクラウドの利用で生産性を向上させ、有意義な活動に費やす時間が生まれると力説し、システム管理者に向けて「新しい世界があることを知ってほしい」と結んだ。
基調講演の後は、活動内容の発表や後援スポンサー、賛同企業の紹介と続き、システム管理者認定試験合格者の表彰が行なわれた。