「支出の節減効果は2倍」 Coupa スザンヌ・ボルドー氏が語る自律型支出管理の効果
Coupa「Inspire World Tour Tokyo」レポート&インタビュー
支出管理プラットフォームを導入すれば節減は見込める。だがCoupaは、AIエージェントが発注や請求処理まで担う「自律型支出管理」を組み合わせれば、その効果は2倍になると主張する。転換の鍵はツール単体ではなく、顧客の現場でエージェントを実証し知見を移転する専門チーム「Catalyst(カタリスト)」にある。2026年7月24日、「Inspire World Tour Tokyo」で基調講演に立ったスザンヌ・ボルドー氏(カスタマーサクセス担当シニアバイスプレジデント)に、登壇直後の単独インタビューで聞いた。
Coupaが掲げる「自律型支出管理」の20年
スザンヌ・ボルドー氏 Coupa Software カスタマーサクセス担当SVP(シニアバイスプレジデント)
Adobeでプロフェッショナルサービス担当バイスプレジデントなどを歴任した後、2025年にCoupaへ入社。グローバルのカスタマーサクセス、オンボーディング、マネージドサービスを統括し、顧客企業がAI活用による価値を最大化できるよう伴走している。
Coupaは2006年の創業以来、企業の購買・支出管理を一つのプラットフォームに統合するSaaS企業として成長してきた。ボルドー氏によれば、これまでに3,200社を超える顧客と20年以上のデータを蓄積し、その総額は10兆ドル規模に達するという。近年掲げているのが「自律型の支出管理(Autonomous Spend Management)」という考え方で、AIエージェントが発注や請求書処理、サプライヤー選定までを自律的に担い、人はより付加価値の高い判断に集中する世界を描く。
ボルドー氏は、「テクノロジーは、価値を具現化するための手段に過ぎない」と切り出し、Coupaがすべての顧客に約束する3つのコミットメントとして「加速」「共通理解と強化」「専門性の向上」を挙げた。ビジネスプロセスを顧客と同じ目線で理解し、エージェント環境下での新しい働き方を導きながら、チームの機能を高め、明日につながるノウハウを提供するという内容だ。
「Catalyst」に見る、SaaS業界のFDEシフト
その具体策として今年立ち上げたのが、成果まで伴走する変革サービス「Catalyst(カタリスト)」である。顧客のビジネス課題とユースケースを特定し、実際の環境にエージェントを組み込んで効果を実証したうえで、チームの仕組み化、ナレッジの移転、そして長期的な伴走へとつなげる5段階のアプローチを取る。
この動き方は、Forward Deployed Engineer(FDE:最前線展開エンジニア)と呼ばれる職種が担う仕事に近い。FDEはもともと米パランティアが生み出した役割で、エンジニアが顧客の現場に入り込み、要件定義から実装までを一体で進める。生成AIの実用化が進んだ2023年以降はOpenAIやAnthropic、DatabricksといったAIネイティブ企業がこぞってFDE組織を立ち上げ、採用需要も急拡大するなど、業界の主要な事業モデルの一つに定着しつつある。Coupaが打ち出したCatalystは、こうした潮流が支出管理の分野にも今後波及していくことを意味する。
Catalystには、エージェントを構築する技術者に加えて、購買業務に精通したビジネスコンサルタントも組み込まれている。これまでのSaaS実装とは異なり、AIエージェントには「継続的な磨き上げとコーチングが必要」だとボルドー氏は語り、新人が育つプロセスになぞらえた。エコシステムに強力なSIパートナーを組み込んでいる点も特徴で、チェンジマネジメントやスケール可能な変革をパートナーが担うことで、Catalystとの組み合わせが変革のスピードを上げるという。導入の準備がまだ整っていない顧客には、既存投資からのギャップを可視化する「価値実現化サービス」も別途用意している。
エージェントが生む具体的な成果
成果はすでに数字に表れている。エージェントワークフローの導入により、サポートチケットの解決時間は34%短縮し、サプライヤーカテゴリーへの問い合わせ件数は73%減少したという。新たなサポートエージェント「Lyra(ライラ)」も投入し、専門家に取って代わるのではなく、最適な担当者へすばやくつなぐ役割を担わせている。学習面では、コスト負担なしのロールベース研修を全メンバーに提供し、「Associate」「Professional」「Expert」の3段階の認証制度を整えた。月間4,000人以上が参加するユーザーコミュニティも、世界20支部以上に拡大しているという。
講演を終えたボルドー氏に、Catalystの実態や自律化がもたらす効果について、あらためて話を聞いた。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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