「支出の節減効果は2倍」 Coupa スザンヌ・ボルドー氏が語る自律型支出管理の効果
Coupa「Inspire World Tour Tokyo」レポート&インタビュー
自律化で節減効果は2倍に
──Coupaは「自律型の支出管理」を掲げています。地政学リスクや購買力の低下、競争の激化が進むなか、なぜ今これが企業にとって重要なのでしょうか。
ボルドー 20年間の実績で、3,200社以上のお客様に生涯にわたる節減を実現してきました。効率化とリスクの低減、不正の検知を仕組み化することで可能になっています。支出管理プラットフォームを10億ドル分導入いただければ3,000万〜4,000万ドル相当の節減が見込め、自律的な支出管理を組み合わせれば効果は倍増します。人では見落としがちな二重請求をAIエージェントが検知し、発注書とのマッチングによって不要な支出を防ぐといった具合です。
──65種類以上のAIエージェントを展開する計画とのことですが、エージェントが自律的に働くには人間側の業務プロセス変革も欠かせません。ツールを導入しても使いこなせないという失敗パターンも指摘されますが、どう回避しますか。
ボルドー 財務・経理のユーザーには、支出がどこで発生し、どう分類され、どこに節減の余地があるのかを早く確実に把握する必要があります。エージェント機能はすでにプラットフォームに内製化されているので、別のツールにログインし直す必要はありません。チャットで自然言語のままエージェントと対話しながら、請求書処理やサプライヤーのオンボーディングといった反復作業を任せられます。人を置き換えるのではなく、浮いた時間をより価値の高い業務に振り向け、購買戦略と企業戦略を合致させることが狙いです。
Catalystは何が新しいのか──FDEの実態
──講演で紹介されたCatalystについて伺います。具体的にどのようなことをするのでしょうか。
ボルドー まずお客様のビジネス課題やユースケースを特定し、最も効果が出る領域でエージェントを実装環境に組み込んで実証します。カスタマイズは数日で済むこともあり、実装後もチームが継続的にチューニングと知見の移転を行い、お客様自身の実行力を高めていきます。今年5月にラスベガスで発表したばかりのサービスですが、すでにワークショップだけで導入までの時間を40%短縮し、数百万ドル規模の追加の節減効果を見込むお客様も出ています。
──アメリカではFDEという役割が急速に注目を集めています。日本ではIT部門が外部委託に慣れている一方、財務や購買部門にはそうした文化がなかったように思います。この違いをどう見ていますか。
ボルドー これまでのSaaS導入には、決まった標準的な進め方がありました。ベンダーもパートナーも同じ手順を踏んでいれば済んでいたのです。しかしAIは実装環境ごとの調整が前提になります。アメリカのお客様も、ビジネスを深く理解した技術者がプロセス全体に伴走することの重要性を認識し始めています。日本でもパートナー企業が同じように重要な役割を果たしており、Coupaのイネーブルメントとパートナーの実装力を組み合わせれば、同じ価値を日本のお客様にも提供できると確信しています。
成果に連動する新しい料金モデル
──Coupaは「マージン・マルチプライヤー」という考え方を掲げ、AIエージェントを構築・運用するためのオファリング「Coupa Compose」のようなサービスでは成果に連動した価格体系への移行も進めていますね。
ボルドー 目指しているのは、CFOと購買のリーダーに支出のすべてをこのプラットフォーム上で管理していただくことです。そのためAgent as a ServiceであるComposeのオファリングでは、管理された支出額に基づいてどれだけ節減できたかに連動する料金体系へ移行しつつあります。ユーザー数やログイン数で決まっていた従来の課金とは異なり、利用が増えるほど節減効果も伸びる仕組みです。カスタマーアドバイザリーボードなどお客様の声を通じて、このモデルが確実にプラットフォームの価値に紐づいているかを検証しています。
人とAIの責任分担、日本企業への処方箋
──AIエージェントが発注や支払いを自律的に判断するようになると、誤った場合の責任の所在が気になります。人間が最終チェックする仕組みは残るのでしょうか。
ボルドー ヒューマン・イン・ザ・ループを残すことはとても重要です。エージェントの設計段階から、人がガバナンスやガードレール、制約を組み込みます。導入初期はほとんどの企業が100%自律的な判断には踏み切れないでしょう。エージェントは提案や価格情報、サプライヤーの推奨を提示しますが、最終判断は人が担います。金額の上限を超えたら人に確認を求める仕組みを設けながら、エージェントへの信頼が高まるにつれて自律性を広げていく形になります。
──日本の財務・経理部門はAI導入に保守的だとよく言われます。どこから始めるべきでしょうか。
ボルドー まずは情報を探し、集めることを助ける「アシスト型」のエージェントから始めることです。CFOも購買担当者も、自分の仕事が奪われるのではという不安を抱きがちですが、日々の業務でAIを使いこなす体験を積み重ねることで、組織全体の確信につながります。数字で成果が見え、信頼が積み上がれば、日本でもアドバイス型、そして自律型へと段階を踏んで移行していけると考えています。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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