リコーが挑む超高難度SAPプロジェクト 3領域でFit to Standardを貫いたPgMO運営
別々で動いていた刷新プロジェクト、リーダーの判断とは
「プロジェクトの規模が大きい」「複数の大規模プロジェクトを同時に進める」「複数のプライムベンダーがプロジェクトに参画する」──これらはプロジェクトの難易度を高くする条件として、一般的に語られることが多い。なんと、これらすべての条件がそろった非常に難しいプロジェクトに挑んでいる企業がリコーである。「SAP Cloud ERP Private」の導入プロジェクトについて、同社リーダーに聞いた。
3領域に「SAP Cloud ERP Private」をワンインスタンスで導入
複合機やITサービスなどを提供し、日本を代表する企業規模を誇るリコー。同社は、以前からSAPを利用していたわけではない。国内における導入プロジェクトが始まったのは2022年の後半。旧システムは稼働開始から20年以上を経過しており、バージョンアップで機能強化をしたくても難しい状況にあった。また、リスクの増大も懸念されていたという。たとえば、昨今のビジネス環境の変化に迅速に対応できなかったり、担当者の高齢化によって現状維持が難しくなったりなどだ。さらに、これまで利用してきた旧システムは、業務領域ごとに構築されてきた。とあるシステムはパッケージを導入し、別のシステムはスクラッチ開発とバラバラで、会社全体で見ると個別最適化された仕組みだったことも課題となっていたのだ。
こうした要因を背景にビジネスプロセスを見直し、“Fit to Standard”を前提としたシステムに刷新することでオペレーションを効率化し、経営環境の変化にも強い仕組みを構築しようと考えた。リコーでERP展開推進室 室長を務める大野芳明氏は、当初各領域で別々に刷新のため製品選定を進めていたと明かす。しかしながら、前述した課題などを踏まえ、結果的に「生産管理」「サービスパーツ」「個社会計」の3領域にわたり「SAP Cloud ERP Private」を採用。生産管理の領域には、「Advanced Available-to-Promise(aATP)」を導入することで、在庫引き当てをより厳密にコントロールし、受注のタイミングからバックオーダーの処理、出荷直前の調整などを行えるようにしたいと考えた。また、サービスパーツの管理領域には、拡張モジュールである「Extended Service Parts Planning(eSPP)」を導入。サービスパーツの複雑な引き当て処理に対応し、在庫管理の適正化を目指した。
さらに、個社会計の領域については、顧客数が多いことからトランザクション件数が膨大になってしまう一方、経理の高い要求水準に応えるためにカスタマイズすることは避けたかったという。そこで、SAPを中核に据えつつも、単独で実現が難しい要件については他社SaaSの併用、一部はローコード開発で対応している。加えて、帳票の作成出力、ジョブ管理、文書管理などのSAP以外のシステムについては、共通基盤上で利用できるようにした。なお、インターフェース基盤やデータ基盤は、既に構築していたものを活用している。
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大野氏は、「販売管理まで導入できれば、より統一できたかもしれないが、この領域は他のものよりも広い。同時期に別のプロジェクトが進行していることもあり、リソースの確保が難しく見送らざるを得なかったが、今後の導入を視野に入れている」と語った。この3領域には、ワンインスタンスでの導入が進められ、2025年にリコー本体での稼働が開始。現在はグループ会社に展開中で、2029年度末の完了を目指している。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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