リコーが挑む超高難度SAPプロジェクト 3領域でFit to Standardを貫いたPgMO運営
別々で動いていた刷新プロジェクト、リーダーの判断とは
「アドオン判定会議」で役に立った、7つの分類
リコーがSAP導入プロジェクトで重視したのは、Fit to Standardの徹底である。大野氏によれば、基本構想の策定段階において、業務とSAPの提供機能のフィット率は、3領域で70%前後とそれほど高いものではなかった。そこで、3領域における製品導入プロジェクトを集約後、全体方針としてFit to Standardを周知することで、各領域のフィット率を高めていったという。業務プロセスの見直し、拡張モジュールの導入、SAP以外のソリューションの採用、RPAの活用などの対策を講じて業務の効率化を図り、“標準プロセスでの実現性”を高めることで、フィット率を高めていった。テストや稼働後には、一部で追加変更が発生したためにフィット率が下がったものの、それでも当初に目標としていたフィット率で運用ができているという。
Fit to Standardを基本方針とすれば、プロジェクトオーナーや業務部門の責任者など、関係者に丁寧に説明しなくてはならない。加えて、プロジェクトが進むにつれて、実務とのギャップが明らかになってくる。もちろん、標準機能にないからとユーザーの要望を却下することが必ずしも正しいとは限らない。ギャップが判明したときにどのような対策を講じるか、そのための体制とプロセスを考えておきたいところだ。リコーの場合、「アドオン判定会議」を運営して、そこで対応方針を決めていく運用をとった。
この会議の特徴は、標準機能と要望とのギャップを7項目に分類し、それぞれで対応方針を決めていることにある。まず、法規制や業界ルールに関するものは、自社だけではどうにもならない。基本的にSAPの標準機能を使うこととし、それでも実現できないものは追加開発すると決めた。次に、競争優位に関わってくるものは、顧客やパートナーへの影響を考慮した慎重な判断が求められる。追加開発が必要と判断したものについては、コア部分に過度なカスタマイズやアドオン開発を行わない「クリーンコア」を重視し、SAPのバージョンアップに影響しないよう対応することにした。
また、社内ルールや業務プロセスに起因する要望については、システム側ではなく、業務プロセスやルールを見直す。さらに、判断が難しいもの、影響が大きいものはプロジェクトオーナーの預かりとし、関係者全員が判断に加わることを重視した。
[画像クリックで拡大]
「本番運用のイメージを明確にした上で評価することが重要」と大野氏。要件定義フェーズで「いける」と判断したものの手戻りになってしまう、テストの段階で実運用に耐えられないなど、差し戻しになるケースが多かったという反省からの言葉だ。開発やテスト段階では、変更管理のプロセスで上がってきた要望をすべて受け入れるのではなく、必ず評価すること。その上で、フィット率を維持する努力を通じて、Fit to Standardの方針を貫いたという。
この記事は参考になりましたか?
- EnterpriseZine Press連載記事一覧
-
- リコーが挑む超高難度SAPプロジェクト 3領域でFit to Standardを貫いたPg...
- 第一三共の挑戦、AIエージェントを相棒にしてデータドリブン創薬研究の「次のボトルネック」を...
- 創業50年超のアシストが描く製品提供の「その先」 既存資産を殺さないSoR/SoIの現実解...
- この記事の著者
-
冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
