国産FDEの現在地と課題
FDEの本家と、国内各社の取り組みの差は何か。手がかりは、現場に人を置くこと自体にはない。本家が、現場から何を持ち帰ったかにある。
パランティア(Palantir Technologies)は米国の情報機関や国防組織を初期の顧客とし、判断の誤りが許されない現場へエンジニアを送り込んだと語られる。その中核に、オントロジーがある。散在するデータを、人や設備、案件といった現場の「もの」と、その関係や状態、実行できる操作に結び直す共通モデルである。異なるシステムのデータを、現場の判断と行動に使える形へ翻訳する層ともいえる。
日本のIT業界が長らく客先常駐や顧客伴走と呼んできたやり方との違いは、人を送り込むことではない。送り込んだ先で実装し、そこで得た型を自社プロダクトへ還流させ、次の現場へ横展開する。この循環が、パランティアの高収益を支えてきた。
では、日本企業が掲げるFDE、いわば日の丸FDEはいま、どこにいるのか。日立を含め、国内各社の構えを表に並べる。
| 企業 | 打ち手 | 現場に入る部隊の形 | 方法論をどこに置くか | 公表している規模 |
|---|---|---|---|---|
| 日立製作所 | HMAX/Physical AI FDE | IT・OT・プロダクトの混成チーム | 現場知とHMAX Data Fabric | 国内FDE(IT・データ領域)5,000人規模、FADCは100人から300人へ |
| 日本IBM | IBM Enterprise Advantage | FDU(6役割のユニット)+AIエージェント | ソフトウェア化してプラットフォームへ | 2026年内にFDU導入支援10件 |
| 富士通 | Uvance/パランティアAIP | Salesforce FDEパートナー網に参画 | パランティアのAIP(Artificial Intelligence Platform)を導入 | 2029年度末に1億米ドル規模 |
| NTTデータ | Smart AI Agent | Salesforce FDEパートナー網に参画 | パートナーの方法論に依拠 | 生成AI事業で2027年度累計1,000億円 |
| NEC | BluStellar | 自社コンサル部隊 | 自社をクライアントゼロとして実践 | コンサル人材1万人 |
| ソフトバンク | Crystal Intelligence | OpenAIとの折半出資合弁 | OpenAIの法人基盤に依拠 | 非公表 |
表のなかで、構えが共通するのが日立製作所と日本アイ・ビー・エムである。日立はIT・OT・プロダクトの混成チームで入り、日本IBMは8月に本格展開した「IBM Enterprise Advantage」で、FDU(Forward Deployed Unit)としてユニットごと顧客先に入る。一人のFDEでは足りない。現場に入れるのは個人ではなく、役割を組み合わせたチームだ。その点で両社の構えは重なる。
ただし、一人では足りないとする理由は違う。日立は、ITとOTとプロダクトの知識が一人に載らないから混成にする。日本IBMは、アーキテクトとエンジニアだけでは業務を作り替えられないから、成果責任を持つリードや業務設計など6つの役割を最初から一つのユニットに組む。編成は近く、足りないものが違う。
もう一つの問いは、人材である。日本の大手IT企業は長く、顧客先への常駐と人月で規模を作ってきた。要件を仕様に落として人数で構築する仕事と、現場の構造を読み、動く仕組みとして残す仕事とでは、求められる技術者の質が異なる。
IT・データ領域のFDEを5,000人規模へ増やす、コンサル人材を1万人置く、といった目標は各社から出ている。既存のSEの肩書きを付け替えて届く数字なのか。ここが曖昧なままだと、看板はFDEでも中身は従来型の人月ビジネスへ戻りやすい。
そして、鍛える場そのものがあるかという問いが残る。パランティアの循環は、巨大な発注がFDEを鍛え、製品へ還流させることで回ってきた。防衛や政府系の大型案件は日本にもあるが、単一の巨大発注者がソフトウェア基盤を横断して買い続ける構造にはなりにくい。入る先が個別SI案件の寄せ集めであれば、方法論は積もりにくい。高収益のプラットフォームに結びつく大きな案件を、日本のFDEはどこで獲るのか。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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