2026年9月11日、EY Japanは「日本企業の次の経営アジェンダ」と題した説明会を開催した。
EY Asia East / Japan クライアント・アンド・インダストリー・リーダー 喜多和人氏は「日本企業は、今まさに歴史的な転換点にある。従前的な対応では解消できない諸課題に直面しており、生成AIひとつとってもオペレーションの在り方を刷新しなければならない」と指摘。市場からの要請も高まる中、いかに企業価値の向上につなげられるか。そのアプローチに向けて、「AI」「地政学リスク」「資本市場における企業価値向上」の3つを論点とした提言が同社 担当者からなされた。
「AIが企業競争力や企業価値に与えるインパクト」
生成AIが浸透した現在、企業におけるエキスパート人材からは単なる回答ではなく、(明文化された状態で)意思決定につながるための要素を求められている。単に利便性の向上にとどまらず、事業戦略や投資判断などの複雑な意思決定プロセスにAI活用をつなげるため、再度注目を集めているのが「オントロジーモデル」だ。EYストラテジー・アンド・コンサルティングの山本直人氏は、「ビジネスにおいては多角的な視点が求められ、それらの“因子”となるものに着目しなければならない。(AI活用においても)因果を読み解きながら意思決定を下していくことが重要だ」と述べる。オントロジーモデルを用いて因果関係を見出し、仮説検証へと進んでいく。攻めのAI活用こそが鍵になると訴えた。
また、経営者の観点からは、AIの出力に対する真正性、人が判断・責任を担うためのHuman-in-the-Loopのような仕組みが求められている。EY新日本の脇野守氏は、「生成AIに多様な情報を入力できるようになり、モデルも作れるようになったりと“自由度”が高まっている。そのため、何を事実・目的としているかが重要だ。多額なAI投資が行われる中、AIが適切に認識できるデータの品質を担保することも欠かせない」と話す。
そこで同社では、システムベンダーと協業しながらERPと会計システムとのデータ連携、AIによる証憑突合の補助などに取り組んでいるという。加えて、日本ディープラーニング協会(JDLA)が展開するAIガバナンス第三者認証制度「C認証」を取得するための支援サービスも展開していくとのことだ。
地政学リスクを生き抜く企業変革の最前線
米国による中国メーカー(製品)の輸入規制が2025年末から動き出している。一方、日本政府における輸入規制の議論は緩やかだが、日本企業に大きな影響をきたす部分もあるとして、「たとえば、中国製のヒューマノイドロボットを用いて生産された製品を米国に出荷できるのか、故障の際に遠隔修正できるのか。また、米国の『CFIUS』を基にした動向にも着目しなければならない」と、EYストラテジー・アンド・コンサルティング 國分俊史氏は述べる。
米国がCFIUSに基づいて積極的な動きを見せる中、日本政府では整備が進んでおらず、未だ不正競争防止法ではおとり捜査ができないなどの現況がある。だからこそ、日本企業は自助努力として米国政府からの信頼獲得のために取り組まなければならず、それを同社はサポートしているという。たとえば、台湾有事を想定したとき、在日米軍基地が攻撃対象となることが予測され、既に倉庫などを基地周辺から移転させている企業もいるとする。他にも、2022年から3年間の間に「シャドウ・ウォー」として、ロシアが欧州内で山火事などを起こしている事例もある中、「日本の場合、山林が所在する都道府県の知事の要請がなければ、自衛隊は動けない。私有林を有する企業は多く、山火事を想定したBCP策定もサポートしている」と國分氏。地政学リスクに対抗するため、中国事業を持株会社化して資本関係を見直すなど、多様な提言を行っているとした。
資本市場が求める企業価値向上の論点
日本企業においてアクティビストによる動きが鮮明化しており、個別事業のパフォーマンス評価が役員の選解任を求める理由として上がってきている。また、6割以上の企業が市場中央値を上回る水準で株主還元を行っているものの、アクティビストからの要求は変わらない。EYストラテジー・アンド・コンサルティングの菅田充浩氏は、「かつては、企業が株主還元を行えばアクティビストは立ち去っていた。しかし現在は、事業ポートフォリオを詳細に読み解いた資本効率改善などに係る提案を行うなど、アクティビティストの行動が変化しており、企業は事業価値の向上が必要になっている」と述べる。
アクティビスト自身も企業価値向上につながる提案を行うことで、他の株主の賛同も得やすくなる。そのため、事業分析に投資をする動きが米国を中心に活発化しているという。特に、日本においてはコーポレートガバナンスコードの改訂を受けて、成長投資ガイダンスが公表されている中、ガバナンスを効かせた成長投資をうながす動きもある。アクティビストにとっても提案の根拠となりやすく、日本企業はより子細な粒度でガバナンス強化と“大型投資力”の強化を図る必要があるとした。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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