ガートナージャパン(以下、Gartner)は、IT調達における地政学リスクに関する見解を発表した。同社の調査から、国内企業のビジネスリーダーの多くがIT調達において地政学リスクの影響を検証する必要性を認識していることに加え、コスト増以上に事業継続への影響を強く懸念していることが明らかになったという。
Gartnerが2026年3月に実施した調査(国内のビジネスリーダー399人を対象)によれば、「可能な限り広い範囲のIT調達において地政学リスクの影響を検証すべき」と回答した割合は66.4%、「一部のIT調達において検証すべき」と回答した割合は25.6%だったとのこと。両者を合わせると、90%以上の回答者がIT調達における地政学リスクの検証が必要であると考えていることが浮き彫りになったとしている。
一方、IT調達において最も検証すべき地政学リスクとして挙げられたのは「事業継続」(55.3%)で、「コスト増」(25.9%)を大きく上回った。企業は物価上昇や為替変動によるコストへの影響だけでなく、クラウドサービスやソフトウェアの供給停止、サービス品質の低下などが、自社の事業継続に及ぼす影響をより強く懸念していることが明らかになったという(図1を参照)。
IT調達においても地政学リスクへの対応が新たな経営課題に
近年、世界各地で衝突や緊張の高まりが続く中、その影響はエネルギーやサプライチェーンにとどまらず、企業のIT調達にも及んでいるという。AIの活用拡大やデジタル化の進展により、クラウドサービスやソフトウェアは企業活動を支える重要な基盤となっており、ITサービスの継続性や安定供給に対する経営層の関心が高まっているとのことだ。
地政学リスクの高まりは、世界的なインフレや為替変動によるITコスト上昇だけでなく、グローバルに分散したサービス提供体制への影響、各国・地域で進むデータ保護規制やAI関連法制の複雑化など、様々な側面から企業のIT調達に影響を与えるという。
クラウドおよびソフトウェアが最優先の検証対象
同調査で、地政学リスクの影響を優先的に検証すべき調達対象について尋ねたところ、「クラウド」または「ソフトウェア」と回答した割合は合計で65.8%に達したとのこと。企業の基幹業務は、顧客向けサービスがクラウド環境を前提に構築されるケースが増えており、これらのサービスへの影響は事業継続に直結するとしている。
事業継続、コスト増、コンプライアンスの3つのリスクを総合的に管理する
IT調達における地政学リスクへの対応として、Gartnerは「受容」「低減」「回避」「移転」の4つから成る「リスク管理の4原則」を適用することを推奨しているという。地政学リスクを単一の問題として捉えるのではなく、「事業継続」「コスト増」「コンプライアンス」の3つの観点から総合的に管理する必要があるとしている。
事業継続のリスクについては、ベンダーのデータセンターやサービス提供拠点がどこに所在しているのかを把握し、有事の際の復旧時間やバックアップ体制を確認することが求められるという。代替サービスや代替ベンダーの候補を事前に検討しておくだけでなく、取り戻すことができるデータの範囲や、データ移行を支援するサービスとツールの目途をつけることで、サービス停止や品質低下による事業への影響を最小限に抑えられるとのことだ。
コスト増のリスクについては、世界的なインフレや為替変動を背景に、クラウド利用料やソフトウェア保守費用の上昇が今後も継続するとの前提を置くべきだと同社は述べている。その上で、物価上昇や為替変動の影響を踏まえた予算計画を策定し、「必要十分」な調達を徹底することを推奨している。ベンダーによる価格改定の要因の把握も重要だという。物価上昇、為替変動、割引ルールの改定、価格モデルの変更といった各要因について、個別に交渉する時間を確保する必要もあるとのことだ。
コンプライアンスのリスクについては、各国・地域におけるデータ保護法やAI関連規制の変化を継続的に監視し、自社およびベンダー双方の対応状況を評価する必要があるという。特に、重要データやAI機能を活用するクラウドサービスやソフトウェアについては、法令遵守やガバナンスの責任がベンダーだけでなく顧客企業にも問われるとしている。
Gartnerは、2028年までに、締結されるクラウド契約の70%では、地政学リスクがコストや品質に及ぼす影響が事前に検証されるとみているようだ。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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