自前でつくれる国であるべき、使うだけではつくれない
続いて齊藤氏は、国産のフルスタック産業基盤の意味・重要性について田中氏に意見を求めた。計算基盤を海外に依存していては、本当のデジタル主権は生まれない。データからクラウド基盤までを一体化したフルスタックの産業基盤を構築してこそ、国家の競争力を確保できるのではないか。
田中氏もこれに賛同し、「テクノロジーを『使うこと』とあわせて、『つくること』も重要だ」と答えた。同氏は、政府が立ち上げたAI戦略会議の場でも、最先端のAIをつくれる国であり続けるべきだと強調してきた。安全保障の観点からもそうだが、何より田中氏がその意義として重視するのが“人材育成”だ。エンジニアがいなくなった領域のものは、二度とつくれなくなってしまう。
その好例が半導体だ。ある半導体企業の社長は、「入社してくるのは還暦を過ぎたような上の年代ばかりだ」と自嘲気味に話していたという。このエピソードに、田中氏は逆の見方を示す。40代から70代の半導体人材がこのタイミングでまだ残っていたからこそ、運良く日本は「半導体で再興する」と掲げられたのであり、これが10年後、20年後では無理だったかもしれない……。
モノを使ってばかりだと、使える人材は育つが、つくる人材は育たない。さくらインターネットには、「サーバーやデータセンターを自分の手でつくりたい」という想いを持って入社する社員もいるという。初任給で自分のラックやサーバーを買った新卒社員もいるという。クラウドであれAIであれ、つくれる国を目指し続けるべきだし、つくれる国であり続けたい。それが私の想いだ」と田中氏は訴えた。
これを受けて齊藤氏は、自身が日立製作所で鉄道や水道、電力などの重要インフラ向けシステムに携わっていた時代を振り返った。顧客にシステムを構築・提供する際、先方の担当者から「外から持ってきたソリューションでもいいけど、中身がどうなっているのかはちゃんと分かっているのか」とよく指摘されたという。社会システムを支えるデジタル基盤も間違いなく重要インフラの一つであり、自前でつくれる企業が育てば、日本を工業国家として再構築できるのではないかと齊藤氏は語った。
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森 英信(モリ ヒデノブ)
就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...
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