BI(ビジネスインテリジェンス)といえば、企業の様々なデータを元に経営の状況を可視化し、ビジネスの戦略に活かすためのツールとしてここ最近改めて注目を浴びている。
BIには一部の経営層向けの高価なツールという印象がこれまであったが、最近では営業や販売管理など様々な現場の部門にも導入されてきているという。 iPhone/iPadはこうした現場のためのBIの格好のツールでもある。
BIツールベンダとしていち早くiPhone/iPad版を無償公開したマイクロストラテジー。今回、そのデモと紹介のために来日した同社のポールゾルファガーリ氏に話を聞きながら、iPadアプリの「MicroStrategy Mobile」を触ってみた。
App Storeから無料版をダウンロード
MicroStrategy MobileはiPhone/iPad両バージョンがアプリで出ているが、お薦めはiPad版。これまで高価なBIツールでしか体験できなかったダッシュボードの操作感を体験できる。 アップル社のAppStoreから「MicroStrategy」で検索し無料でダウンロードできる。
あらかじめいくつかのサンプルデータとダッシュボードが登録されている。わかりやすいのは「Category Sales and Profitability」だ。商品カテゴリー別の販売状況、収支状況、予算対比などのグラフと表のダッシュボードを見ることができる。 グラフの描画スピードなどもかなりスムーズに感じられるが、実際はどのような体感になるのかを、ポール ゾルファガーリ氏に聞いてみた。
「マイクロストラテジーは、他のメガベンダに買収されたBIツールベンダと異なり自社の品質向上に徹底的に研究開発投資した。今回、他社に先駆けてiPhone/iPad版をリリースできたのもそのおかげ。特にBIエンジンの部分については、バックエンドのデータ処理、フロントエンドの表示スピードについては追随を許さないと自負している」(エグゼクティブバイスプレジデント ポールゾルファガーリ氏)
その他のデータサンプルでも画面構成やグラフが美しく、ダッシュボードは見やすい。
「見せながら話したり、特異点を強調したり、問題領域を強調表示やドリルダウンできるなど、iPadの操作性を最大限に活用している」のだという。
たとえば製品売上げ状況のシートの各セルをタップしたり、スライドさせたりするとデータの拡大や表示の切り替えがスムーズにおこなわれる。
こうしたデータの表示は「設定」によって、マイクロストラテジーのモバイルサーバーにアクセスされているが、もちろん実際は各社のデータを格納したサーバーにアクセスする。ダッシュボードのサンプルのダウンロードなどはこちらからおこなえる。
なぜ現場BIなのか
アメリカの空港などでは、ビジネスマンがiPadで仕事をしているシーンを良く見かけるようになった。日本ではiPadの入荷の不足もあって、屋外でみかけることはまだ少ない。活用シーンを想定するとしたらメールやWebを見るぐらいである。そもそもなぜ、iPadでBIなのか?
「BIはもはや、役員室にいて座っているエグゼクティブだけのものではありません。広く外出先から在庫状況を確認したり、財務状況を管理するといったアクティブなマネジャー層にこそ使ってほしい。iPhone/iPadのリリースはわれわれのそうしたBIフィロソフィーの産物です」とポール ゾルファガーリ氏は語る。
日本ではまだまだBIの活用と言えば、役員会議での報告資料作成のための帳票が目的であったりする。日本企業に根ざしている「紙の文化」はそう簡単になくなるものではないだろう。しかも日本の場合、そうした帳票はエクセルで作られてるケースが多い。こういう状況についてどう思うかを質問してみた。
「米国では会議ではもちろんプロジェクターなどを使うが、iPadなどのシングル電子デバイスによる会議は今後はますます増えてくるだろう。エクセルから経営資料を作る場合の最大の問題点は、データが二次的に加工される精度が保てないということ。一元的なデータの資料による"シングルバージョントゥルース"という考え方が大事」と語ってくれた。
BI業界は合併・買収が進みオラクル、SAP、IBMなどのメガベンダーに集約された感があるが、その中で独立系として事業を拡大しているマイクロストラテジーのBI。BIを現場に導入しようと考えられている方は、ぜひこの無料版アプリをダウンロードして触ってみることをお薦めする。