3.サービスカタログ・ポータル層
「サービスカタログ・ポータル層」は、セルフサービスポータルにより、コンシューマーにクラウドサービスを提供する外部インターフェイスである。旧来のポータルとは異なり、人の介入なく、ITサービス利用開始のためのプロビジョニングが即時に行える機能が提供されるのが特徴となる。また、課金に関連する、ITサービスの使用量や支払いに関連する情報も、このポータルで確認でき、サービスの開始、停止もコンシューマーがセルフサービスで行うことができるようになる。SLA ダッシュボードの機能も有しており、「サービス・マネジメント層」で管理していたITサービスの状態や、構成、パッチやウィルス管理の情報を、視覚的に確認することが可能となる。
4.ファシリティ層
クラウド提供者のデータセンターファシリティを検討する際に参照すべき分野が「ファシリティ層」である。機材を設置するためのデータセンターファシリティとしては、2001年以前に建てられたものでは85%が、電力、空調能力、スペース、床耐荷重不足により、改修か新設が必要となる。さらに増え続けるIT機器とめまぐるしい技術革新による負荷密度の増加が懸念され、稼動時間と冗長性に対する要求が増大し、エネルギー効率に対する関心も高まっている。建物自体でも、アクセスのしやすさと災害発生を見込んだ立地、電力供給、水、ネットワークを考慮したユーティリティや耐震、制震、免震、防火、消火を考慮する必要がある。
また、建物施設としては、床下が高く(600mm 以上)、ネットワークケーブルは天井部に収納でき、床荷重は1 ~ 1.5t/m2が望まれる。セキュリティ面では生体認証、IC カード、暗証番号にゲートを備えた入室管理、入室区画の分離を考慮した提供が望まれる。さらに、ラック配置と空調の最適化を行い、吸気温度のリアルタイム監視によるコストとリスクの削減が求められる。
ラックは、そのほとんどが高い要素密度を求められるため、ブレードサーバーで集約させている場合が多い。そのため、通常のデータセンターよりも高い電力・冷却システムの設備が必要となる。集積度の高いブレードサーバーは、ラックあたり15kW以上が必要とされるが、ほとんどのデータセンターでは、現在平米あたり0.5 ~ 1kW 程度であるため、データセンター管理者は50%以下の集積度のラック運用を決断しなければならない。
これらの解決策の一つが、コンテナ型データセンターである(図2)。コンテナは持ち運びが可能で拡張性に優れ、迅速な増設、そして高いエネルギー効率、低コストを実現している。特に日本HPのPerformance Optimized Datacenter(POD)は、高密度実装データセンターにおける最大の解決策と言える。コンテナ型データセンターは、日本では各種の規制があり実際の導入には困難が伴うが、データセンター特区が施行されれば、一挙にはずみがつく可能性がある。
5.インフラ・サービスデリバリ層
「インフラ・サービスデリバリ層」では、これまでに挙げた機能を実現するためのハードウェア、ソフトウェア、プロセスを含み、クラウド提供者にとっては特に重要となる。ここでは、可能な限りリソースを共有することにより効率的な利
用を促進できる。また、周囲の層へ各機能をリアルタイムで提供するため、クラウド独自の管理ツールやポータル、プロビジョニングのためのソフトウェア群のエンジンが実装されている。
特に、自動化、構成管理、キャパシティ管理、事業継続性、セキュリティ、そしてパフォーマンスマネジメントの機能である。また、インフラ・サービスデリバリ層の核をなしているのが、インフラストラクチャである。ここでは仮想化されたリソースが提供され、サービスデリバリーレイヤによってコントロールされている。これらのリソースにはサーバー、ブレード、ネットワークスイッチ、ファイアーウォール、ロードバランサーやストレージデバイスなどが含まれており、自動化され管理されていることが望まれる。
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