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競争優位性を獲得するために先進企業が実践する最新のBPMとは?

IBM BPM FORUM 2010 特別レポート

市場の変化に迅速に対応するための有効な選択肢として、BPMに関心を寄せる企業は多い。しかし、その果実を得るためには、組織の壁やITシステムの複雑性といった困難な課題を解決する必要があることも事実だ。BPM成功の鍵とは何か。11月24日に開催された「IBM BPM FORUM 2010」から、日本アイ・ビー・エムの保坂大輔氏による講演を再構成してお届けする。

多くの企業が実現できていないBPMは実現すればビジネスチャンスに

日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 WebSphere クライアント・テクニカル・プロフェッショナルズ 保坂大輔氏
日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業
WebSphere クライアント・テクニカル・プロフェッショナルズ
保坂大輔氏

 自社の業務プロセスを継続的に改善し、市場の変化に素早く柔軟に対応する。全社的に統合された情報を基により的確な経営判断を下す。卓越した業務プロセスを持って市場における競争優位性を獲得する。BPMが提唱する理想に異を唱える声はそれほど多くないはずだ。実際、多くの企業がこれまでBPMを実践、もしくは関心を示してきた。

 しかし、BPM自体が決して簡単な取り組みではないことは周知のとおりだ。一般に新たなシステムを導入する際の負担はビジネスに近ければ近いほど大きくなる。日ごろ慣れ親しんだ業務の進め方に影響を来たすような動きに対して、人々は多かれ少なかれ抵抗を示すからだ。BPMはまさに企業の業務プロセスそのものを扱うため、セクショナリズムの壁やリーダーシップの不在など組織に起因する問題に直面しやすい。

 また、いまやビジネスにとって不可欠な存在となったITシステムもサイロ化という壁となって立ちはだかる。ある調査資料によれば、85%のCEOが現状のビジネスプロセスの可視化に満足しておらず、その原因としてITシステムの硬直性をあげている企業も多いという。

多くのCEOが業務プロセスに課題を感じている
多くのCEOが業務プロセスに課題を感じている

 一筋縄ではいかないBPMだが、競争優位性の大きな源泉と捉えることも可能だ。「多くの企業がBPMを実践できていない現状では、ビジネスを効率化することによって得られる利益は大きい」(保坂氏)。

 実際に、他社に先駆けてBPMに取り組んだ結果、競争力を獲得した先進企業は少なくない。ビジネスプロセスの無駄を60%削減した大手銀行、パートナーとの連携に要する時間を50%削減した航空貨物会社、リアルタイムの見える化を行ってデータ連携コストを20%削減した小売業。では、このような成功事例に自社の名を連ねるためにはどのような取り組みが必要なのだろうか。

 11月24日に開催されたIBM BPM FORUM 2010に講師として登壇した日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 WebSphere クライアント・テクニカル・プロフェッショナルズの保坂大輔氏はBPM実践の要諦について、「人や組織に関する課題については、基本的にはお客様自身の手で解決していただかざるを得ない問題。しかし、BPMを実践する段階で直面する業務プロセスの設計やITシステムの統合といった課題については、われわれの豊富なノウハウが役に立つはず」と述べる。社内で一定のコンセンサスを醸成した上で、必要に応じてプロフェッショナルの手を借りるというのが定石といえるようだ。

BPMを行うために人間中心で行くかITシステム統合で行くか

 各ベンダーからさまざまなツールやソリューションが提供されているBPM分野だが、そのアプローチを大まかに分類すると、「Human-Centric」「Integration-Centric」「Content-Centric」の3つになる。

業務プロセスを中心に考えるHuman-Centricなアプローチ
業務プロセスを中心に考える
Human-Centricなアプローチ

  Human-Centricは、「申請する」「レビューを行う」「承認する」など、人間の目から見たビジネスの流れに着目してプロセスの設計や改善を行う。日ごろの業務をフローチャートなどに落としこみ、最適なプロセスを探るアプローチだ。

 一方、Integration-Centric ではITシステムに注目する。例えば、サイロ化したシステムに横串を刺して全体最適化を行うためのプロセスの統合を目指す。Content-Centricでは、その名のとおり作業のインプット・アウトプットとなる成果物に注目してプロセスを管理する。

 各アプローチには、それぞれBPMN(Business Process Modeling Notation)、BPEL(Business Process Execution Language)、ECM(Enterprise Contents Management)という言葉が出てくることが多く、各ベンダーのソリューションがいずれに属するものなのかを把握する目安になる。

システム統合を中心に据えるIntegration-Centricなアプローチ
システム統合を中心に据える
Integration-Centricなアプローチ

 さて、以降はHuman-CentricとIntegration-Centricに絞って話を進めよう。BPMの実践はアプローチを選択するところから始まる。

 企業ごとに状況やニーズは異なるため、いずれのアプローチが最適であるかは一概に言えないが、「判断に迷うようであればIBMなどが提供しているアセスメントサービスを利用するのもひとつの手」(保坂氏)と言えそうだ。

 また、クラウド環境でプロセスの文章化や可視化を支援するサービス「Blueworks Live」では標準テンプレートを手がかりにして、自社の状況を把握できるようになっている。いずれにせよ、自社の状況を把握した上で、適切なアプローチを探っていくことになる。

 (次ページへ続く)

 

 

人間中心のBPMに適したWebSphere Lombardi Edition

Human-Centricアプローチをサポートする「WebSphere Lombardi Edition」
Human-Centricアプローチをサポートする
「WebSphere Lombardi Edition」

 Human-Centricアプローチをとることに決めた場合は、業務プロセスに着目した改善活動を進めていく。IBMが用意する「WebSphere Lombardi Edition」は、業務部門とIT部門が協力しながら業務プロセス改善に取り組むための環境を提供するツール。UIで作成した画面やフローをもとにコードを自動生成する機能や、プロセスの効率性を試算するシミュレーション機能などをもつ。

 Coach Designerとよばれるエディターで業務をこなすために必要なシステムの画面を作成した後、プロセスエディターを使って画面間のフローを定義すると、新しいプロセスに沿ったシステムができあがる。いずれもドラッグ・アンド・ドロップで操作できるため、業務部門とIT部門がひとつの画面を共有し、コミュニケーションをとりながらその場でスピーディに設計作業を進めることができる点が大きな特徴だ。

ドラッグ・アンド・ドロップで作成した画面を繋いでフローを作成する
ドラッグ・アンド・ドロップで作成した画面を
繋いでフローを作成する

 初回のプロセス定義が済んだら、実際の業務で使用しながらプロセスの妥当性を検証していく。重要なのが4~10週ごとに行うプレイバック。関係者を一堂に集め、皆でプロセスの妥当性を検証しながら、必要に応じて変更を加えていく。

 「最初のプレイバックこそ参加者も半信半疑といった表情を浮かべている人もいるが、自分が作った画面でプロセスが流れる様子を検証するうちに、どんどん姿勢が前のめりになる」(保坂氏)という。

 WebSphere Lombardi Editionがひとつのビジネスプロセスを完成させるために想定している期間はわずか13週間。日常業務をこなすためのシステムの画面を作り、それを繋ぎ合わせてプロセスを構築するため、業務部門にとって当事者意識を持ちやすく、ひいてはそれが積極的な協力を引き出すことにつながる。業務部門とIT部門がコミュニケーションの土台を共有することで、四半期という短期間でのビジネスプロセス策定を可能になるわけだ。

ITシステムの統合をプログラミングなしで実現する

Integration-Centricアプローチを支える「WebSphere Dynamic Process Edition」
Integration-Centricアプローチを支える
「WebSphere Dynamic Process Edition」

 一方、Integration-Centricアプローチでは、ITシステムを統合してBPMを行う。いまや、ビジネスプロセスとITシステムは密接に関連しているため、ビジネスプロセスの変更には必ずといって良いほどITシステム間の連携がついて回る反面、この点がボトルネックになることが多いのも事実だ。

 システム間の連携を強力にサポートするのが「WebSphere Dynamic Process Edition」だ。モデリング、開発、モニタリングといったBPMプラットフォームに必要なすべての機能を網羅しており、プロセスのライフサイクル全体をサポートする。

 ITシステム統合のアプローチでは、自社の戦略からスタートし、具体的な目標、それを実践するためのアクションといった具合にブレイクダウンしていく。ITに着目するとはいえ、目的もなく「ただ漠然とITシステムを連携させるような事態は避けるべき」(保坂氏)だという。

具体的なアクションを管理するケイパビリティ・マップ
具体的なアクションを管理するケイパビリティ・マップ

 WebSphere Dynamic Process Editionでは戦略の明確化から具体的なアクションの策定まで一連の作業をサポートするほか、導き出されたアクションを管理するためのケイパビリティー・マップなども供える。「責任の所在が曖昧になりがちな全社横断的な取り組みでは重宝するツール。実際の利用者からの評判も上々」と保坂氏は胸を張る。

 具体的なプランが策定できたら、理想と現状を並べてシミュレーションしながらビジネスプロセスを設計していく。WebSphere Dynamic Process Editionでは、WebSphere Lombardi Editionよりも「マニアック」と言えるレベルでシミュレーションができるなど、細やかな設定が可能になっている。「例えば、あるプロセスの実行時間を設定する場合、平均時間だけでなく、ばらつきを考慮した正規分布やカイ二乗分布を適用することもできる。ツールに精通したお客様でも納得していただけるぐらいに豊富な機能をそろえている」(保坂氏)。 もうひとつの特徴が、豊富なレポーティング機能。「レポート機能を重視する日本企業を想定して、米国本社に対して強く要求してきた」と保坂氏は言う。

設計完了後の運用を支えるダッシュボード機能
設計完了後の運用を支えるダッシュボード機能

 設計が完了したプロセスはBPELとして出力できる。BPEL自体はXMLをベースとしたプログラム言語だが、システム連携の作業自体はGUI上でサービスを線でつなぐだけで、各システムのプロセスをサービスとして呼び出し、自動的に実行できるようになる。

 主に社内あるいは部門内に閉じた世界のビジネスプロセスを構築するWebSphere Lombardi Editionに対し、WebSphere Dynamic Process Editionは社外のシステムとの連携も得意としている。

 WebSphere Dynamic Process Editionでは、ビジネスプロセスの連携状況だけでなく既存のシステムの状況もモニタリングできる。担当業務や立場に応じて必要な情報を表示するダッシュボード機能や、あらかじめ設定したしきい値を超えるような問題が発生した場合のアラート通知機能など、運用開始後に必要となる標準的な機能も備える。

ビジネスへの迅速な対応をサポートしてきたWebSphereの歴史
ビジネスへの迅速な対応を.
サポートしてきたWebSphereの歴史

 「WebSphere Lombardi EditionもWebSphere Dynamic Process Editionもプログラミングなしでビジネスプロセスをモデリングできる。ITシステムのスキルよりも、むしろビジネスプロセスそのものが問われる時代になってきているIBMは、10数年にわたり一貫してビジネスの俊敏性を得るための製品やサービスを提供してきた。Lombardiは意思疎通の迅速化、Dynamic Processは実装の迅速化のための製品であり、IBMは今後もビジネスに俊敏性を与えるための進化を続けて行く」と講演を締めくくった。

 

 

 

 

 

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