BI/DWHの系譜
企業データの分析、活用に利用されるシステムは、業務側面からはBI(ビジネスインテリジェンス)、基盤側面からはDWH(データウエアハウス)と呼ばれている。これらのシステムは、1980 年代のクライアント・サーバー型システムとともに登場し、1990年代の3層型システムの登場に伴って、ユーザー層を拡大し発展してきた。
この時代から現在までは、製品の統合、製品ベンダーの吸収・合併などの変化はあるものの、しばらくは落ち着いていた状況といえる。しかし、2010年代を迎えた今、クラウド・コンピューティングがITアーキテクチャそのものを大きく変えようとしており、BI/DWHもその影響を受けつつある。
本稿では、クラウド・コンピューティングがBI/DWHシステムのアーキテクチャに与えるであろう影響と、クラウド・コンピューティングのアーキテクチャのもとで構築されている最新のBI/DWHシステムの事例を解説し、今後のDWH/BIアーキテクチャの方向性について考察していく。クラウド・コンピューティングとは
クラウド・コンピューティングのアーキテクチャを、今までのITアーキテクチャとの違いという面から見ると、仮想化と分散データ処理技術の進歩と捉えることができる。これらの技術の進歩は、Amazon、Google、Salesforce.comといった特定のアプリケーション・サービス・ベンダーが、以前では考えられなかったようなスケーラビリティを持つ大規模システムを構築・運用することを可能にした。
やがて、これらの企業は、自分達の持つ超大規模システムの一部を、アプリケーション開発・実行環境という形式、あるいは、仮想的なサーバーやストレージという形式で、一般企業に対してサービスとして提供するようになった。
このような経緯のもと、現時点でのクラウド・コンピューティングは、そのサービスとし提供されるITリソースの形式によって、IaaS、PaaS、SaaSの3 つに大きく分類される。これら3 つのサービスの内容と違いは図1となる。