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データ活用新時代

ビジネスのあり方を変革するBIの「進化」とデータ活用を支えるDWHアプライアンス

ガートナー リサーチ部門 アプリケーションズマネージング バイス プレジデント 堀内秀明氏

IBM、Oracle、SAPなど大手ベンダーによる相次ぐ買収によって、ここ2~3年注目を集めているデータ活用市場。その背景には、企業のビジネスプロセスやシステムの設計にも大きな影響を及ぼすBIの進化があるという。同分野に詳しいガートナーの堀内秀明氏に話を聞いた。

業務プロセスのあらゆる局面で利用されるようになったBI

――昨今、BIやDWHに関する話題を耳にする機会が増えましたが、どんなトレンドが生じているのでしょうか?

ガートナー ジャパン株式会社 リサーチ部門 アプリケーションズ マネージング バイス プレジデント 堀内秀明氏
ガートナー ジャパン株式会社
リサーチ部門 アプリケーションズ
マネージング バイス プレジデント
堀内秀明氏

 データ活用に変化があるとすれば、DWHよりもBIの部分だと思います。製品としての位置付けが従来のものから大きく変化してきています。

 簡単に歴史を振り返りながら説明しましょう。BIは今から10年以上前に、SQLよりも直感的なデータアクセスを提供するツールとして誕生しました。「Business Objects」などに代表されるこの頃のBIツールは、個別のPCにインストールするか、もしくはクライアント・サーバ方式で利用する比較的小規模のものでした。

 その後、5年程前から「Web化」の流れが起こります。クライアントにソフトウェアをインストールすることなく、Webブラウザからアクセスできることなどを前面に押し出しました。

 同時に進行した重要な変化がスイート化です。レポーティング、アドホッククエリ、予測分析、Excel用アドインなどBIに関わる機能を全て提供できる点を各製品は謳い文句にした。スイート化によってBIは開発を伴う大規模なシステムへと変化することになります。

 アプリケーションサーバーを構築し、その上でBIを稼働させるとともに、ユーザーのクエリに対応するためのWebサーバーを用意する。ツールならば箱を開ければすぐに使えますが、各種ツールで横断的にデータを活用するためには、データを所定の形に整えておかなければならなくなったわけです。つまり、BIがツールからプラットフォームへと変化したとも言えるでしょう。

 スイート化を進めるにあたり、自社の弱い機能を競合他社の買収で補うという手段もとられた。それが、Business ObjectsによるCrystal Decisionsの買収であり、HyperionによるBrioの獲得です。しかし、その後まもなく、彼らはBIの重要性を認識したメガベンダーによる買収を受けることになりました。OracleがHyperion、SAPがBusiness Objects、IBMがCognosをそれぞれ買収したことは皆さんの記憶にも新しいはず。

 まとめると、BIは純粋なデータの見える化のツールから企業のデータ活用を支えるインフラ、プラットフォームへと変化してきており、その可能性を察知したBIベンダー、そしてメガベンダーによる買収によって市場の再編が行われていたと見ることができます。

 現在は、いかにBIを使いこなして成果に結びつけるかという点にフォーカスが移ってきています。今まではツール、もしくはアプリケーションの一部として提供されていましたが、今ではコンサルティングまで含めたサービスが立ち上がってきています。

 ベンダー側に寄った視点ではありますが、テクノロジーの進歩によって、BIが提供する機能や提供する企業の大きさが変わってきた。それに伴い、ごく一部の専門家が使う特殊なツールから、ビジネスの至る所で利用される普遍的な存在へと変わってきています。

――ビジネスのあらゆるところから利用されるとは、どのような意味でしょうか?

 初期のBIは主にワークグループ単位で利用されていました。例えば、部内に蓄積された売上のデータを集計するためのツールとして導入されていた。その後、BIがプラットフォーム化するとともに現れた象徴的な機能がダッシュボードです。自社のビジネスのKPIをポータル上に表示し、社員全員で共有する。Web技術によって情報を多人数で共有することが容易になったわけです。

 さらに、BIがアプリケーションベンダーに買収されると、分析のための環境を提供するという受動的なスタンスから一歩進んで、「現在の在庫状況とこれまでの販売履歴を参照すると、このように発注してはどうか」といった具合にアプリケーション側から積極的に提案したり、場合によっては自動的に対応したりといったことが可能になってきます。見える化のためのツールからビジネスの意志決定を行う際に常に参照すべき存在へと変化してきているということです。

図1:BIツールの変遷
図1:BIツールの変遷

――例えば、今までだったらBIから得られた知見をもとに、業務アプリケーションに注文を入力していたところが、業務系と情報系が直接接続されることになる?

 そう見えると思いますが、ちょっと考え方を変えたほうがいい。データを活用できる前提でアプリケーションのあり方を考えなければならないということです

 例えば、今までは物流、在庫、販売支援それぞれにシステムが分かれているのが一般的でした。それぞれからデータを取得してレポートとして見ることは可能ですが、基本的には個別に完結した世界だった。ところが、常に全社のデータを見られるとすれば、どんな判断ができるでしょうか? 業務全体の最適化という視点に基づいてシステムを組めるとしたらさあどうしますか?といった具合に変わってきている。

 システムを設計するときの考え方が、「今の業務プロセスのこの部分を自動化しましょう」というものから、「このような情報が手に入るから、どのようにプロセスを設計すると一番良いか考えましょう」というものへと変わるわけです。同じようなことを違う側面から言っているだけなのですが、アプリケーションを設計する立場としては大きな違いになるはずです。

――つまり、業務効率化のためのツールではなくて業務最適化のツールになるということですね。そう考えると、一昨年の大買収は大きな意味を持ちますね。

 持ちます。BIの重要性を認めたメガベンダーが、自社の製品をブラッシュアップするよりも、外部にある優れたテクノロジーを提供した方がユーザーに受け入れられると考えたわけですよね。それで、開発に要する時間と顧客基盤をお金で買ったわけです。

次のページ
今、DWHアプライアンスが注目を集めるわけ

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この記事の著者

緒方 啓吾(編集部)(オガタ ケイゴ)

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