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Interview

BCPコンサルタントに聞く電力危機を乗り切るためのヒント

NRI 宗裕二氏

東日本大地震によって電力供給問題に直面している首都圏。現在、小康状態にあるものの、夏場に向けて再び需給の逼迫が予想されている。今後、企業はどのような対策をとるべきか。事業継続計画(BCP)に詳しいNRI宗裕二氏に取り組みのヒントを聞いた。

震災をきっかけに広がるBCP見直しの動き

NRI 宗裕二氏
株式会社野村総合研究所
ERMプロジェクト部
テクノロジーリスク・マネジメントグループ
グループマネージャー 宗裕二氏

―震災後、BCPに関する問い合わせが増えているのでは?

 電力に関する問い合わせが非常に増えていますね。BCPを専門にするコンサルタントだけでなく、普段、客先に出入りする営業部隊にも相談が寄せられています。現在、今後の対策について個別に相談に乗っているところですが、政府の方針が計画停電から総量規制へと変わり、業界内では自主行動計画が進められるなど、状況も刻一刻と変わっていますから、まだまだ各社も結論が出る段階ではありません。現在進行形で検討を重ねている状況です。我社もある程度まとまった形で提言をすべく準備も進めています。

 また、現状のBCPの実効性について疑問に感じた企業から、再点検のご相談を受ける機会も出てきています。例えば、現在、関東の企業の多くは、内閣府が主催する中央防災会議で作成されたシミュレーションをベースにBCPを策定しています。シミュレーションの中でも最も被害が大きいととされるのが「東京湾北部地震」という被災シナリオなのですが、東京都心の被害が大きい場合でも、神奈川は被害が軽いといったレベルの予想になっています。

 結果として、データセンターの分散も以前のような「東京と大阪」ではなく、「東京と神奈川」「西関東と東関東」といった形が多くなってきています。ただ、今回の震災も踏まえ、妥当性を再検証しなければならないという見方も出てくるでしょう。もちろん、企業としてはあまりに甚大な災害を想定した投資はできませんが、電力、鉄道、ガス、水道といった公共系の企業はよりシビアに想定を見直す必要があるでしょう。

―特に、電力事情は何らかの対策が必要ですね。

  企業が直面しているのは総量規制です。直近では、以前の25%削減から緩和される見込みになっていますが、引き続き大きな問題になっています。金融機関やIT系企業では、消費電力量に占めるシステムの割合が非常に大きいため、電力を削減すると業務に支障を来す恐れがあります。また、工場を抱えるメーカーを中心に輪番操業といった話題も出ています。ただし、輪番操業で単純に操業時間を減らすと、生産量もその分減少することになりますから、何とかそれ以外の手段で達成できないかと各社とも知恵を絞っているところです。

手持ちのBCPプランとリソースを組み替えて当座をしのぐ

―何か対策を考える上でのヒントはありますか?

 電力状況への対応は、厳密な定義からは外れるかもしれませんが、災害対策、危機管理という意味ではBCPの考え方が有効だと思います。といっても、電力事情が懸念される夏までに残された時間はごくわずか。これから、大々的にプランを検討している余裕はありません。東京電力のエリア以外に新しい拠点を作ったり、大規模な投資をしたりといった対策も難しい。よって、パンデミックや地震などのシナリオを想定して作成したこれまでのプランを組み替えて、当座を凌ぐことになるでしょう。まずは、自分達の状況を冷静に整理してみて、何ができるか、何が足りないのかを確認することが第一歩です。

 ただし、電力事情は1~2年改善されない可能性もありますから、今年末や来年夏など、電力の需給が再び厳しくなる時期に備えて、並行して手を打っておくことも必要でしょう。総量規制が間に合わず、大停電に陥った場合の対応策も考えておくべきです。

 

 

―これまでのBCPで特に参考になるものはありますか?

 今回の電力問題はインフルエンザのパンデミックが発生した場合に似ていると感じています。現在、多くの企業ではインフルエンザについては、強毒性と弱毒性の2つのシナリオを想定したBCPを策定していますが、そのうちの強毒性のシナリオが共通点も多く、参考になるでしょう。

 例えば、弱毒性の場合は、ある時点で見た場合の被害規模は限定的です。例えば、20人の部署で半数程度が欠勤することはありえますが、会社全体、地域、社会に影響を及ぼすような事態に発展することは少ない。

 一方、今回は、多くの人々が通勤困難になり、生産活動にも支障が出ているほか、外資系を中心に一部の企業では大阪などに拠点を移転する動きも見られます。もちろん、被害が人間ではなく設備であるなど、異なる部分もありますが、影響範囲の大きさや期間の長さという面では強毒性インフルエンザのシナリオに近いと思います。

―電力需給問題は、しばらく季節ごとに再燃しそうです。

 夏の電力不足は、インフルエンザでいうところの第二波に当たるというイメージで捉えています。直接の被害としての電力不足が波及して、二次的に交通機関の輸送力が低下、人の移動が阻害されるなどの影響が発生します。

 ただし、パンデミックの時は、従業員の安全も考慮してリソースのコントロールをする必要がありましたが、電力事情について言えば直接の危険はないので、制約条件からは外して良いと思います。一番の判断基準は公共性。企業が担っている社会的な機能を停止させてしまうと、社会全体のサイクルが滞ってしまいます。企業としては、工場、システムなどの生産設備やオフィスの消費電力をどうやって減らすか。ワークスタイルを工夫して、業務効率を維持しつつ、リスク回避を図るか。電力問題による影響を最小化するための方策が求められます。

 (次ページへ続く)

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在宅勤務と分散オペレーションが有効

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この記事の著者

緒方 啓吾(編集部)(オガタ ケイゴ)

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https://enterprisezine.jp/article/detail/3071 2011/04/27 00:00

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