SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

最新イベントはこちら!

Data Tech 2024

2024年11月21日(木)オンライン開催

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けの講座「EnterpriseZine Academy」や、すべてのITパーソンに向けた「新エバンジェリスト養成講座」などの講座を企画しています。EnterpriseZine編集部ならではの切り口・企画・講師セレクトで、明日を担うIT人材の育成をミッションに展開しております。

お申し込み受付中!

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2024年秋号(EnterpriseZine Press 2024 Autumn)特集「生成AI時代に考える“真のDX人材育成”──『スキル策定』『実践』2つの観点で紐解く」

Events & Seminars

セールスフォース・ドットコムが実践する独自のアジャイル開発手法とは?

Agile Japan 2011~Inside Salesforce R&D ~ Salesforce.comのアジャイル開発手法


アジャイル開発手法を採用するプロジェクトの中でも、セールスフォース・ドットコムの事例は規模という面で際だった存在の一つだろう。同社の巨大なSaaSはどのようにして支えられているのか。本稿では「Agile Japan 2011」のセッションの中から、株式会社セールスフォース・ドットコム CTOの及川喜之氏とSonicGardenカンパニー長でアジャイルジャパン実行委員の倉貫義人氏による事例セッション「Inside Salesforce R&D ~ Salesforce.comのアジャイル開発手法」の内容をレポートする。

クラウドコンピューティングとアジャイル開発の相性の良さ

SonicGardenカンパニー長倉貫義人氏
アジャイルジャパン実行委員 倉貫義人氏

  セッションは「クラウドとアジャイル」と題した倉貫氏による短い講演で幕を開けた。同氏がカンパニー長を務めるSonicGarden(TISの社内カンパニー)では、Amazon EC2のクラウドプラットフォーム上で「youRoom」をはじめとする各種アプリケーションサービスを提供している。いわゆるSaaSと呼ばれるビジネスモデルだ。そして言うまでもなく、セールスフォース・ドットコムは「Salesforce CRM」をはじめとするSaaS型サービスをワールドワイドで提供する、世界最大のSaaSベンダーである。

 倉貫氏は、ITビジネスのトレンドがオンプレミス型からクラウド型へ移行しつつあり、さらにクラウド型の中でもPaaS(Platform as a Service)の分野が注目を集めている現状を説明した後、クラウドとアジャイル開発の相性の良さについて次のように述べる。

 「製造業における品質管理の特徴を一言で言えば、ユーザーが製品を買った時点で最高の品質を提供する“Point of Sales”型。一方のサービス業は、ユーザーがサービスを利用する間、常に最高品質の提供を目指す“Point of Use”型。クラウドは言うまでもなく後者に属するビジネスモデルだが、“Point of Use”で大事なことはサービスの“継続性”と“保守性”を担保すること。アジャイル開発は、この2つの目的に極めて良くフィットする」

 安定した品質のサービスを継続的に提供してくためには、短いサイクルで繰り返し開発を進めていくアジャイル開発のモデルがとても良くマッチする。また、定常的に新しい機能やサービスを追加提供していくためには、システムの保守性をいかに担保するかが鍵を握る。この点においても、「変化を抱擁せよ」(Embrace Change)というXP(エクストリーム・プログラミング)のテーゼが表す通り、仕様変更や機能追加を前提とするアジャイル開発の手法はクラウドと極めて相性がいいと倉貫氏は指摘する。

セールスフォース・ドットコム独自のアジャイル開発手法「ADM」

株式会社セールスフォース・ドットコム CTO 及川喜之氏
株式会社セールスフォース・ドットコム
CTO 及川喜之氏

 続いて及川氏が登壇し、セールスフォース・ドットコムにおけるアジャイル開発への取り組みについて紹介を行った。同氏は2007年より同社日本法人のCTOを務めるが、それ以前は同社の米国本社R&D部門で製品全般の開発業務に長く従事している。

 セールスフォース・ドットコムがアジャイル開発手法を採用したのは、2007年のことだ。1999年の創業当時はごく少人数でのウォーターフォール型開発でサービスを順調にリリースできていたものの、ビジネス規模とトランザクションの急速な伸びとともに開発者の数も急増。それに伴い、開発生産性も悪化してきたという。

 そこで同社が2007年に導入したのが、「ADM」(Adaptive Development Methodology)と呼ばれる同社独自の開発メソッドだ。ADMについて及川氏は次のように説明する。

 「ADMは、アジャイル開発手法『SCRUM』(スクラム)に基づいている。ただし、スクラムもそのままの形ではうまくいかない部分もあるので、社内のさまざまな事情に応じてXPのベストプラクティスを取り入れながら、スクラムをカスタマイズしている」

 ADMの個々の手法はスクラムやXPのプラクティスそのものなので、アジャイル開発に詳しい人にとって特に目新しい点はないかもしれない。しかしここで注目すべき点は、実際にそれらの手法が、セールスフォース・ドットコムという極めて大規模なシステムの開発・保守で使われ、そして十二分に効果を発揮できているという点だ。事実、同社で2007年にADMを策定・導入した効果は、直ちに表れた。サービスリリースのサイクルは劇的に短縮され、リリースする機能の数も大幅に増えたという。

 ADMの内容は多岐に渡るが、本セッションでは「スクラム」「品質優先」「オートメーション」の3点に絞って、その内容が披露された。

 (次ページへ続く)

次のページ
アジャイル開発手法「スクラム」がベース

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
Events & Seminars連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

EnterpriseZine(エンタープライズジン)
https://enterprisezine.jp/article/detail/3098 2011/04/28 11:47

Job Board

AD

おすすめ

アクセスランキング

アクセスランキング

イベント

EnterpriseZine(エンタープライズジン)編集部では、情報システム担当、セキュリティ担当の方々向けに、EnterpriseZine Day、Security Online Day、DataTechという、3つのイベントを開催しております。それぞれ編集部独自の切り口で、業界トレンドや最新事例を網羅。最新の動向を知ることができる場として、好評を得ています。

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング