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【特別座談会】再生のためのIT

個人/コミュニティ/企業のゆるやかな連繋が生み出す再生のグランドデザイン


システムの連繋から考える再生のグランドデザイン

榊原 今の話でいえば、役所そのものがなくなってしまった、その上でどうする、という問題です。僕らが考えているのは、他の自治体が肩代わりすることもできるんじゃないか、ということです。住民サービスの基本的な部分はそう変わらないはず。なぜ、代行できないのかと。例えば、岩手県が被災したら、鳥取、鹿児島のシステムを代行するとかできないのか?ネットワークでオペレーションを融通しあうようなアーキテクチャを作って、その技術仕様のもとに、例えばデータベース製品としてはオラクルを入れて、SQL Serverをいれて…という具合にできないのかと。自治体サービスの共通化ですね。もちろん、すべてを共通化するのは無理でしょう。調達系など、各自治体で独立している部分もありますし。ただ、プロセスの共有、バックアップの共有など、ネットワークで共通化できる部分はあるはずなんです。
 
岩切 宮古市の場合は、品川区で開催される「目黒のさんま祭」のご縁で、品川区から人とモノの支援が、釜石市は、新日鉄繋がりで、北九州市役所が、また大阪市が釜石や大槌に大量の職員の方を派遣して下さり、ずいぶん助けていただいているようです。
 
西脇 そうですね。だからヒトの連繋はできるんですよ。問題はシステムです。なんでシステムの連繋ができないのか。これからは、初動のオペレーションではなく、ゆっくりとした復興のフェーズです。中長期的な将来を見据えた次の時代のグランドデザインを考えなければならない。考えなければいけないんですが、今回はあまりに被害が大きすぎて、こうした理想を話すにはまだ時期尚早かなという側面もあるんですよね。例えば、避難所一覧を見ると、「何月何日に何名移動」といったような情報が付箋紙でやりとりされているんです。被災地にいるときは、なるほどこれが一番便利ということで、ITの無力さを思い知るんですが、東京へ戻ってくると、やっぱりあれは何とかなるんじゃないかと思うわけですよ。このギャップ自体が、いかんともしがたい。
 
榊原 データがデジタル化されてないことの弊害は強かったと思いますよ。罹災証明ひとつとっても、避難所の名簿、その人が本当にその人である確証がない。アイデンティファイできない。こうした気付きを背景に、現在、広域大災害などの危機的状況においても迅速かつ円滑に被災地域の自治体業務が再開できるよう、自治体の区分を超えて災害対策・業務継続性を考慮したITシステムを提案し、その実現を目指すための体制作りを支援する非営利のプロジェクト「Project ICHIGAN」が発足しました。IT どころではない、となってしまう以前に、備えておくべきことがあるだろうということで、継続的に活動を続けていきたいと考えています。
 

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この記事の著者

小泉 真由子(編集部)(コイズミ マユコ)

情報セキュリティ専門誌編集を経て、2006年翔泳社に入社。エンタープライズITをテーマにイベント・ウェブコンテンツなどの企画制作を担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/3215 2016/01/05 18:32

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