今回の震災では、情報伝達の手段としてITが大きな役割を果たした。その一方で、震災から3カ月以上がたち、被災地復旧・復興のための課題もようやく見えはじめつつある。ソーシャル、モバイル、クラウド――震災後にITが果たした役割を振り返りつつ、復興を見据えた今後のIT課題について議論してもらった。
【座談会 出席者】
■司会
■出席者
-
さくらインターネット研究所 上級研究員 松本 直人氏(Skype 参加)
-
日本アイ・ビー・エム株式会社 グローバル・ビジネス・サービス事業 CTO IBM ディスティングイッシュト・エンジニア 技術理事 榊原 彰氏
-
日本マイクロソフト株式会社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部 エバンジェリスト 砂金 信一郎氏(Skype 参加)
-
日本マイクロソフト株式会社 テクニカルソリューション エバンジェリスト 西脇 資哲氏
岩切 今日は「再生のためのIT」をテーマに、個人として、コミュニティの一員として、また企業として活動されているみなさんにお集まりいただきました。震災後の復興活動については、個人か企業かといった立ち位置がとても曖昧になっていることもあり、こうした場で振り返っていただくにも、立場上、いろいろ難しいところもあるかもしれませんが、お話しできる範囲で、みなさんの率直なご意見をいただければと思います。
そのとき、エンジニアたちはどう動いたのか
松本 まず、僕らエンジニアが震災直後にどんな動きをしていたかというと、草の根的に動き出したのが、地震の翌日、12 日からです。
日本マイクロソフト株式会社
テクニカルソリューションエバンジェリスト
西脇 資哲氏
西脇 震災直後のTwitterの動きでいうと、11日中は生存確認がメインですよね。翌日の午前中からお昼くらいに、どこそこのサイトが落ちてどうなったという話になったかと思います。その頃、慶応義塾大学の村井純先生が、「ITでなにかできるのでは?」と問いかけたんですね。もちろん、各地で草の根的な動きがどんどん出てきたころだと思いますが、村井先生の呼びかけが、一つの大きなきっかけになったと思います。
砂金 僕らのほうで、一番最初に問題視されたのは、赤十字のサイトです。これはまずいねという話をTwitterのTL上で、アジュールのコミュニティであるJAZ(Japan Windows Azure User Group)のメンバーと話していました。すると、2、3時間後に、亀渕さんが「ミラーサイトできました」と。そこから、アジュールをもっといろんなことに使えるんじゃないかなという話になり、冨田さんや亀渕さんをはじめとした何名かが旗振り役になってくれたというわけです。
岩切 アジュールによるミラーサイトは、マイクロソフトとしてというより、#clude Mixというコミュニティが瞬時に立ち上がり主体となって動いていたんですね。
砂金 初期はそうですね。今回のポイントは、ベンダーの垣根を越えて、コミュニティが結束したということ。松本さんはアマゾンなど他ベンダーのコミュニティとの橋渡し役をしてくれた貴重な存在です。マイクロソフトのアジュール担当としての、僕の仕事は、そうしたコミュニティの皆さんの活動を裏で支えることでした。例えば、彼らが岩手県のミラーサイトを勝手に立てちゃいましたというのが、あとで問題になるとまずいわけです。そこで、公共営業チームに連絡して調整をしたりしていましたね。
震災翌日の3月12日にはTwitter 上で、エンジニアたちが草の根的に動き出した
岩切 私は岩手県の釜石市出身ということもあって、「岩手県のサーバーが不安」という県のツイートを見て、助けてくれとTwitterでつぶやいたところ、アマゾンとMSさんが手を上げてくださいました。その後、県庁にサポートしてくださる方がいると電話したのですが、断られてしまいました。そうこうしているうちに、さくらさんがミラーサイトを立ててくれた。その後、アジュールでも…と地球防衛軍的に(笑)、どんどんミラーサイトが立ち上がっていったんです。ベンダーの垣根を越えた、IT屋さんの魂の美しさを見たというか、ありがたかったですね。