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アプリケーションのビジネス価値を高めるためにとるべき戦略とは

Gartner BPM & SOA サミット 2011


 2011年6月30日と7月1日の2日間に渡り、東京コンファレンスセンター(東京・品川)にてガートナー ジャパン主催のイベント「ガートナー BPM&SOA サミット 2011」が開催された。同イベントでは「グローバル競争に耐えるアプリケーション環境への変革のために」というテーマが掲げられ、グローバル市場における競争力強化を迫られている日本企業にとってBPMやSOAがどのように役立つものなのか、ガートナーのアナリストやベンダー企業による講演、またユーザー企業による事例紹介などが行われた。

アプリケーションのビジネス価値を高めるためにとるべき戦略とは

ガートナー リサーチ バイス プレジデント 飯島 公彦氏
ガートナー リサーチ バイス プレジデント
飯島 公彦氏

 「経営に対するITの重要性がますます高まっているが、その内容は大分変化してきている」

 グローバル時代を迎えた今日、企業活動におけるITのポジションはビジネス戦略に近づく必要がある。言い換えれば、企業のIT部門は、よりビジネスに直接的に関与することが求められる。

 「IT部門は今までのようにSIerにすべて任せっきりにするのではなく、これからは経営に対してどのような提案を行っていくかということに、より知恵を絞っていかなくてはいけない」(飯島氏)

 とはいえ、具体的に何をすれば良いのだろうか? 飯島氏によればポイントは3つある。1点目は、IT部門がアプリケーション戦略を考える前提となる要件を正確にとらえること。その最たるものは「グローバル化」だが、近年ではその質にも変化が見られる。

 「昨今のキーワードは“不測の事態”。3月11日にわが国において悲劇的な震災の被害が発生したが、現在そうした予想のつかない事態が世界中の至るところで発生している」(飯島氏)

 例えば新興国の経済力の急伸や市場の急速な拡大、資源を巡るグローバル競争、あるいはクーデターや震災、金融・為替リスクなどといった不測の事態が、グローバルレベルで絶え間なく発生している。海の向こうで起こるこうした不測の事態が、日本企業に対して直接的に影響を及ぼすのがグローバル経済時代だ。スピード感やコスト構造、あるいはリスク管理など、ビジネスにおける前提条件が大きく変わってくる。

 従って、グローバル市場に打って出る企業は、ここで一度ビジネスのやり方を見直してみる必要がある。具体的には、ビジネスルールやガバナンスのあり方、ビジネスのスピード感とリスク/コスト低減とのバランスの取り方、業務最適化と競争力強化のための各種施策、そしてグローバル人材の育成や人材の最適配置などを強化する必要がある。すると、ERPによる管理会計の強化や人材の管理、SCMによるサプライチェーンのリスク管理、さらにはBPMによるグローバルレベルでの意思決定の迅速化などによってサポートするのがITの役割になる。ビジネスの前提条件を把握した上で、ITによってどのようなサポートが必要になるのか、それを考えるのがポイントだ。

 ではこうした新たな事態は、企業のアプリケーション戦略全般に対しては、一体どのような影響を及ぼすのか。

 「不測の事態が常態化した環境下では、アプリケーションはビジネスの変化や多様化に柔軟かつ迅速に追従できなければいけない。また、ビジネスの展開と撤収に迅速かつ低コストで対応できる必要がある。さらに、さまざまな施策を全社規模で行う機会が増えるため、アプリケーションも全社規模での展開を前提として考えていかなければいけない」(飯島氏)

 そのためには、アプリケーションの構造自体を業務ごとの単位ではなく、全社規模で考えていく必要があると飯島氏は説く。すなわち、アーキテクチャの重要性が増すということだ。また、ビジネスプロセス全体をITでカバーするためには、プロセスを構成する個々の業務をサービスとしてモジュール化した上で、それらの間をつなぐインタフェースを実装非依存で実現していくことが必要になる。グローバルにアプリケーションを全社展開するためには、地理的な制約に依存しない体制を整え、分散環境における管理性や可視性を担保することも重要だろう。

 アーキテクチャについて言えば、アプリケーションを構成する各レイヤーに、「全社最適」の考え方を導入する必要がある。通常、業務の全社最適を図る場合には、まず社内の各部門を横断する「グローバル/全社標準」という層を設け、その上に「リージョン/事業部標準」が乗り、さらにその上に現場の細かいニーズに応えるための「個別対応」の層が乗るという3層構造が取られる。これは業務設計の考え方だが、アプリケーションにもこの全社最適の考え方を取り入れる必要があると飯島氏は言う。

 「アプリケーションを構成する各レイヤー、すなわちユーザーインタフェース、ビジネスプロセス、サービス、そしてデータのそれぞれで、この全社最適の3層構造をマッピングしていく。ガートナーではこれを“参照アーキテクチャ”と呼んでいるが、これにより初めてITの構造とビジネスの全体の視点が構造的にマッピングできるようになる」(飯島氏)

システムにも全体最適を目的とした三層構造のアーキテクチャを
システムにも全体最適を目的とした三層構造のアーキテクチャを
出典:ガートナー(2011年6月)

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この記事の著者

吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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