2.会社と個人の切り分け
とはいえ、個人の端末で会社のデータを取り扱い、あるいはアクセスするわけだから、会社と個人の切り分けをどうするか、という課題が残る。これは会社のスマートデバイスを社員に貸与しても似たような問題がある。それは、どこまでが会社の資産で、どこまでが個人の資産か、ということだ。
たとえば社員にiPhoneを貸与したとする。会社ではゲームを含め、アプリケーションの購入は個人任せにしている場合、社員が自分でAppleIDを取得し、個人のクレジットカードでアプリケーションを購入し、インストールする。この場合、このアプリケーションは個人資産と考えられるのだが、では社員が退職したらどうなるのだろうか。AppleIDは会社のメールアドレスにしていると、退職したらそのメールアドレスは使えなくなるはずだ。ということは、一般的に考えると社員はそのアプリケーションの所有を放棄せざるを得ない、ということになる。社員が退職後にもう一度iPhoneを購入するという保証も義務もないからだ。
こういうケースをいくつか想定し、この場合はどうする、ということをあらかじめ考えておかないと、いざそういう場面に遭遇すると問題が大きくなりかねない。
私はいつも、スマートフォン、スマートデバイスの導入は、情報システム部門に丸投げしっぱなしではいけない、と繰り返している。その一つが上記のように情報システム部門の領域を遙かに離れてしまい、法務、コンプライアンス、財務、そしてユーザー部門など、ステークホルダー全てを巻き込んでいかないといけない。一方で、ステークホルダー全員の合意を待っていると、いつまで経っても導入できないという事態にもなりかねない。
だからこそ、当社では少数でのパイロット(試験導入)を強く推奨している。仮に1,000人の社員全員に使わせたいのだとしても、数十台の一部署、あるいは一部の社員でパイロットしてみたうえで、どういった問題が起こるのか、あるいは起こり得るのかを、机上で考えるのではなく、実際に取り組んでみたからこそ分かることが多いからだ。ぜひ、情報システム部門に押し付けっぱなしにせず、経営者も交えて全社的に取り組んでいくことで、本当に活用できるスマートデバイスであることを体感していただきたい。
次回は、スマートデバイスを使った社内コミュニケーションを考えてみたい。