適正な数の在庫を持つために行うデータ分析には、以前の連載「統計関数編」で行った安全在庫の計算の他に、今回説明する需要予測があります。需要予測のやり方には多くの計算方法が存在しますが、今回は、もっとも理解しやすいと思われる移動平均を使用します。移動平均の計算は統計関数でも可能ですが、ここでは分析ツールの「移動平均」を利用します。
需要予測とは
需要予測とは、売れる量を前もって推測することです。なぜ、前もってこのような推測を行なう必要があるのでしょうか。基本的には、顧客が商品やサービスを手に入れるまで我慢できる時間より、調達/生産して顧客の手に届けるまでの時間のほうが長いため、事前に在庫を準備しておく必要があるからです。
しかし、在庫が多すぎるとコスト/資金繰りに悪影響を与え、少なすぎると機会損失につながります。そのため、過不足を起こさないようにちょうど良い量を事前に推測する必要があります。 需要予測の方法は、大きく2つに分類できます。1つは「統計的な予測」、もう1つは「人的な予測」です。統計的な予測では、過去の実績を基に数学的なモデルを駆使して未来の予測値を弾き出します。モデルは多数存在しますが、一般的な業務担当者には理解しづらいものが多いのも実情です。
一方、人的な予測は、顧客数や見込み客、商談や受注状況に関するデータを積み上げて予測する方法です。ここにはある程度、人の経験と勘が反映されます。統計的な方法に比べると、近い将来をより正確に予測できますが、状況は刻々と変化するため、短いスパンで見直しを図れることがポイントとなります。
いずれにせよ、需要予測は簡単ではありません。したがって、「統計的な予測」と「人的な予測」を組み合わせて行われているのが実情です。また、「統計的な予測」だけについても、複数のモデルや複数のパラメータの組み合わせをいろいろ試してみて、その企業の需要予測に最適なものを見つけていくことも重要です。
今回は、需要予測のモデルとしては移動平均のみを使用しますが、移動平均のパラメータについては複数のものを試してみて、その結果から最適と思われる方法を見つけていきます。
分析ツールで移動平均をもとめる
以下のデータは、以前の連載「統計関数編」でAVERAGE関数を利用して移動平均を計算した際に使用したものです。

ここでは、このデータから分析ツールを利用して移動平均を計算してみます。



このように分析ツールを利用すると、計算式を入力したり、セルをコピーしたりする必要がなく、簡単な手順で移動平均が計算できます。
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平井 明夫(ヒライ アキオ)
株式会社エムキューブ・プラスハート 事業企画コンサルタントDEC、コグノス、オラクル、IAFコンサルティングにおいて20年以上にわたり、ソフトウエア製品やITサービスのマーケティング、事業企画・運営に携わる。現在は、事業企画コンサルタントとしてIT企業の新規事業立上げ、事業再編を支援するかたわら、デ...
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