エンタープライズ領域へのPostgreSQLの普及を目指すPGEConsが動き始めた
セミナーの冒頭、PGEConsの事務局長を務めるSRA OSS,Inc の石井達夫氏は「燃えるような意気込みで、会員企業各位が取り組んでいます」と説明する。
PostgreSQLについては、海外ではなく日本に最大のコミュニティがあり、日本からも多くの開発への貢献がある。まさに、日本における活発な活動が認められているオープンソース製品だ。その日本でエンタープライズ領域への普及を目指して本格的な活動が始まったことで、海外からの注目度も高い。
現状、PGEConsでは、情報発信、共同検証、開発コミュニティへのフィードバック、開発プロジェクト支援という4つの活動を行う。会員構成は正会員と一般会員の2つ。正会員には議決権があり、具体的な活動を行うワークグループに参画し人的リソースを提供して活動する。一般会員はメーリングリストやWebなどから活動情報が得られるというもの。どちらも年会費などの費用負担はない。入会費、年会費等がないので、活動するための機器や人、場所などは各社が持ち寄り行われている。
10社で発足したPGEConsもこのセミナー開催時点で正会員12社、一般会員12社の合計24社に拡大している。一般会員には、開発系の会社もいればユーザー企業もいる。ユーザー企業が一般会員になるというのは、その会社はPostgreSQLを企業として活用し、使いこなしているというのを公表していることになるだろう。
運営委員会は隔週の月曜日に、その週の木曜日には広報部会が開催されているとのこと。具体的な検証などを行うことになる技術部会については、7月26日に最初のワーキンググループが発足し、原則隔週木曜日に活動を行う予定だ。技術部会のテーマとしては、サイジングなどを含む性能評価手法モデル、マルチコアCPUでのスケールアップ性検証などの性能向上手法、チューニングノウハウや実行計画制御手法などのチューニング、高可用性クラスタ、災害対策などエンタープライズ領域で必ず必要となるものが挙がっている。
また、他のデータベースからの移行性についても今年度中に着手する予定。SQLなどの互換性検証、ストアードプロシージャに対する意向ノウハウの整備、移行コストの見積もりの考え方など移行時に直面する問題に対処する。さらに、今後の活動の1つとして、PostgreSQL対応のソフトウェア一覧をWebで公開する。現在10分野15製品が集められており、最終的にはPostgreSQL関連の情報が集約されているポータル的な情報発信の場を目指す。そして、9月7日、8日開催されるオープンソースカンファレンス2012 Tokyo/FallにもPGEConsとして出展が予定されている。11月下旬には活動成果の中間発表を行い、2013年3月までを1つの区切りとして成果をまとめ公表していく予定だ。
セミナーでは一般会員となった住友電気工業株式会社、ヤマハモーターソリューション株式会社のPostgreSQL利用の事例についても紹介された。両社ともPostgreSQLが標準のデータベースに指定されている。PostgreSQLの評価ポイントとして、日本でのコミュニティ活動が盛んであり情報が得られやすいといったあたりは共通している。さらに、サポート期限切れなどベンダー側の理由でのバージョンアップなどを避け、自分たちのペースで計画できる点もオープンソース製品を選択するメリットだと報告された。
とはいえ、オープンソース製品を社内標準にし使いこなすためには、自分たちでそれなりの機能、性能の評価を実施し、自社内にかなりのノウハウ蓄積が必要となるだろう。問題が出ればソースがあるのですぐにパッチを制作し対処できるというメリットを享受するには、ソースを読んでパッチを作れる技術スキルが求められることになる。逆に言えば、そういったことを実現できるようにするための検証やノウハウの提供が、PGEConsには求められることになるのだろう。