"ビッグデータ活用"の名の下に、脱法的な利用はなぜ起きるのか?
いわゆるビッグデータの取り扱いについては、本人同意に基づけばどのような情報の取り扱いでも行うことが可能であるとか、利用規約への承諾があればいかなる取り扱い方法も認めらるといった誤解など、ビッグデータ活用の名の下に脱法的な利用が散見される。
便利で種々多用なサービスが日々新たに登場し、その利便性やポイントなど付加価値による恩恵を享受する機会が提供されている現状において、それらを利用しなければ「損」であるという利用者の意識の広がりがある。サービスの提供に伴い取得される大量のデータを有効活用しないことは「損」であるという事業者の認識の高まりもある。この両者の損得勘定が、不透明で不可解な情報の取り扱いを結果的に許容する現状を招いている。
特定の事例や事業者名を挙げることはできないが、ネット上で問題が指摘される事例は増加の一途を辿っている。とりわけ、情報の取り扱いに関して、個人情報には該当しないデータであるとか、法令において明確に禁止されていない取り扱い(そのように誤解している場合も含む)にあたるので問題はないと考える風潮がある。確かに、個人情報保護法違反に問われるリスクは極めて低く、プライバシー侵害で訴えられることも稀であることから、いわゆるビッグデータの取扱いにあたっては、法令遵守や個人の権利利益保護への取り組みが軽視される傾向があることは否めない。
消費者も自らの個人情報が利用されプライバシーを放棄せざるを得ないことを認識してはいるものの、日頃サービスを利用する際には、そのようなことは意識せずに利便性や恩恵を享受することを優先している現状があるのも事実である。だからといって、利用者に用意されているのは、表示された同意画面の説明内容を十分に読まずに単に同意ボタンをクリックするだけ。事業者側も、利用者は利用規約や個人情報保護方針の内容など「読まないだろう」と高を括って、ウェブの画面上の同意ボタンを押してもらいさえすれば全権委任されたものと考え、あとはビッグデータ活用の無限の可能性を検討さえすればよいという現状には危惧を覚える。