科学的アプローチでベンチャーや既存企業での新規事業開発を実現するためのアプローチ、「リーンスタートアップ」が話題である。本連載では、特に企業内での新規事業開発に焦点を絞り、日本でのリーンスタートアップの第一人者でもあり、コンサルタントでもあるリーン・スタートアップ・ジャパン代表の和波俊久氏に、解説頂く。1回目となる今回は、リーンスタートアップとは何か?その隆盛の背景などを解説頂いた。

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なぜ今リーンスタートアップなのか?その背景
いまから4年前の2008年9月8日、シリコンバレーのあるアントレプレナーが書いたブログが後に大きな注目を集めることになります。エリック・リースが書いていた「StartupLessonsLearned」というブログの「Theleanstartup」という記事です。それから3年後の2011年9月、エリック・リースが満を持して出版した"The Lean Startup"は出版直後からアメリカでベストセラーとなりました。ここ日本でも訳本が今年4月に出版され、ITベンチャーのみならず、企業内の新規事業開発担当者や企業経営者などから広い注目を集めています。
日本のトヨタ生産方式に起源を持つというこの「リーンスタートアップ」は、これまでとかくアイディアやコンセプトに重きを置かれていた新規事業開発という分野に対して、「マネジメント」という一見すると退屈なアプローチで望むことを推奨します。イノベーションはアイディア豊富でクリエイティブなビジョナリーから生まれるという概念を覆し、もっとも退屈な実験を淡々と繰り返す中からこそイノベーションは生まれるのだということを理論化したのです。
本連載では、このリーンスタートアップを組織内に導入し、効果を挙げるためにはどうしたら良いのかを集中的にお伝えしていこうと思います。リーンスタートアップをどのように組織に取り入れていくかというテーマは、リーンスタートアップの実践による効果を得るために必要な最初のステップなのですが、エリック・リースの書籍ではこのステップについて十分にカバーされていたとは言えません。エリック・リースが実際にコンサルティンを実施したいくつかの事例を通じて導入のヒントは示されてはいますが、すべての組織においてその事例が当てはまるとは限らないのです。

実際、私が日々の活動を通じて実感している、リーンスタートアップの採用に対する「障壁」となる要因をご紹介し、それをいかに克服していくかについて解説していきます。読者の皆様がベンチャーであれ、企業内の新規事業開発担当者であれ、障壁には共通する要素が存在しますので、ご自身の組織の状態と照らし合わせながらお楽しみ頂ければ幸いです。
第1回目となる今回は、リーンスタートアップがここまで注目されるようになった背景について少し触れておきたいと思います。いま世界でどのような変化が起きているのかを理解することは、リーンスタートアップの必要性を理解する重要な鍵となるからです。既存の新規事業開発手法を捨て、リーンな考え方が必要となった理由をご紹介します。
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和波俊久(ワナミトシヒサ)
"Lean Startup Japan"ブログ主宰者。 IT企業でITサービスマネジメント及びプロジェクトマネジメントのコンサルタントを務める傍ら、数々のITプロジェクトの失敗やデスマーチを経験。リーンスタートアップを広く普及するために、2010年10月より&...
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